28回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。
たまらん坂健康バロメーターによれば、今日の体調は十のうち八といったところ。まずまずか。
台風が去ったあと、急に寒くなった。
暖房がほしいくらいだ。
数日前からキンモクセイが香っている。
「あと三回ですね」
と、すっかり顔なじみになった技師がいう。
「お変わりありませんか?」
いつもそのように声をかけてくれる。
仕事だろうとは思うが、気遣いを感じてうれしい。
これより先は技師同伴なしでははいれない放射線管理区域へと、厳重な自動ドアをくぐってはいっていく。
奥には広々とした部屋があって、カーテンで仕切られた着替えのスペースがふたつと、寝台がひとつ、ほかにはさまざまな機器類が置かれている。
ロッカーキーやスマホをカゴに入れ、靴をスリッパにはきかえて、細長い寝台のところに行く。
技師がふたり、介助してくれる。
寝台に横になる。
先に上半身だけ着替えていて、簡素な病院着だが、横になるとその前を技師がひらく。
私は両手を万歳のかっこうで上にあげ、設置してあるハンドルを握る。
私の胸の皮膚に描かれたマークを基準に、技師がふたりがかりで身体の位置を照射のために合わせる。
ミリ単位の微妙な位置合わせで、ときどき専門用語が飛びかう。
92・4という、なんの単位かわからないいつも同じ数字が聞こえる。
真上に巨大な円盤のような機器がまわってきて、真上と斜め上の二か所で位置合わせがおこなわれたあと、技師ふたりは部屋を出ていく。
しばらくするとブザー音が聞こえ、たぶんX線照射が何秒間かつづく。
斜め横からと真上から、二度照射されたあと、円盤がぐるりとベッドの下へと回りこんでいく。
技師がひとりもどってきて、なにやらガシャンガシャンとベッドの土台あたりを操作して、出ていく。
またブザー音。
もう一度技師がもどってきて、円盤の角度を変えてもう一度。
都合四回のみじかい照射が終わると、お疲れ様。
受付で翌日の治療の予約をして、あとは支払いをすませて病院を出る。
ほとんど午前十時からの予約で、私が家を出るのは午前九時すぎ。
治療が終わって家に帰ってくるのは、遅くても午前十一時前。
一時間半から二時間弱の所要時間だ。
これを三十回おこなうわけだが、所要時間も短く、通院ですむので、負担はかなり少ない。
体調の変化はもちろんあるが、日常の生活や活動に大きな影響がないことがありがたい。
このことが私にとってとても大切であり、また幸せなことでもある。
いまを生きる。
ただ、体調の変化は治療が進むにつれてやや大きくなっていて、とくに夜の活動はきつくなってきた。
武術も夜の講習会には参加するのがむずかしくなってきている。
サーフィンもまた行きたいのだが、寒くなってきているし、体力の消耗をかんがえると、今後の体調の変化を見て判断する必要がありそうだ。
とはいっても、一度はやってみたいと思っていたサーフィンを何度かできたことは幸せなことだ。
もちろん、またやれるといいなと願ってはいるが、今後の状況はわからない。
すべてをいま現在に集約して受け入れ、逆らわずサーフしていきたい。