泣いた。
いい映画だった。
今年・2018年公開のカナダとアイルランドの合作映画。
監督はアシュリング・ウォルシュという人(知らない)。
10年以上前に「荊の城」という映画を作っているが、私は未見。
これは実在の画家モード・ルイスの半生をモデルにした映画らしい。
モード・ルイス役をサリー・ホーキンスを演じている。
どこかで見たな、しかも最近……と思ったら、「シェイプ・オブ・ウォーター」の主役で、この映画でアカデミー主演女優賞を取っている。
これも大変よかった(こちらのレビューは書きそびれているが)。
モード・ルイスは重度のリューマチを病んでいて、親戚からもうとましがられ、ひどい仕打ちを受けている。
ただひとつ、絵筆を持って好きな絵を描くことだけがささやかな幸せで、そのために自分の居場所と自立を求めて、家政婦の仕事に出る。
それが夫となるエベレット・ルイスの杣屋《そまや》であった。
本当に質素で、粗末な家なのだが、そこでささやかな自分の時間を見つけていくモード。
そしてある日、彼女の絵に価値を見出す女性があらわれ、モードは徐々に画家として知られるようになっていく。
一種の女性の自立の物語だと感じたのだが、その自立が特別な才能・才覚や人なみはずれた努力や運ではなく、ただありのまま、自分のささやかな幸せを大切にすることだけで成立していくという点が、ほかの成功・自立物語とは異なっているように思える。
そしてそのような人が実在したのだというところに、勇気をもらえるのだ。
夫のエベレット役のイーサン・ホークもよかった。
エベレットは実直な、しかし古い時代の暴力的な男性性を象徴するような存在なのだが、そのなかにもモードにたいする正直さと誠実さがあらわれている。
美しい(だけど荒涼とした)風景と、絶妙な音楽。
引きの画面と寄りの画面の巧妙な構成、静けさと抑制のきいた音楽の絶妙な組みあわせ。
ひさしぶりにサウンドトラックを聴きたいと思いながら、エンドロールでは涙が止まらなかった。