2017年公開のイギリス映画。
監督はアンドレ・ウーブレダル。
知らない。
いやー、びっくりした。
なんか息抜きに観るおもしろそうな映画がないかなと思って、NETFLIXで、全部観るつもりじゃなくて出だしのところだけブラウジング的にちょいちょいとつまみ見していたところ、これに出くわした。
つまみ見が上手になってくると、出だしの数分を見ればそれが自分にとってよい映画なのかどうか、すぐにわかる。
これは最初の1分で「あたり」だと思った。
一家が殺戮された凄惨な殺人現場の地下室から見つかった、まったく損傷のないきれいな遺体。
主役の親子は、その遺体を扱うことになった検死官で、そこはなぜか遺体安置所と火葬場にもなっている(イギリスではそういうシステムなのか?)。
「名無しの権兵衛」を女性にして英語でいうと「ジェーン・ドウ」になるらしいが、身元不明のその遺体をふたりが解剖していく。
非常にリアルで、血とか内臓とか皮膚を切り裂くシーンとか、その手のものが苦手な人はまず見ないほうがいい。
あと、これは声を大にしていっておこう。
気の弱い人はけっしてひとりで見ないでください。
私はうっかりひとりで見はじめてしまって、途中で目を離せなくなって、そしてひさしぶりに、
「肝を冷やした」
たいていのホラーとかサスペンスとかスプラッタなものも含めてたくさん観てきたけれど、この「ジェーン・ドウ」はひさしぶりに心底こわかった。
はじめて「エクソシスト」を観たときのこわさにちょっと似ているけれど、あれをもっと知的に、リアルに、そしてオカルト色を慎重に抑えて丁寧にした感じで、その分心理的な恐怖が増幅される。
いっておくけれど、前半はとくに、遺体を解剖するだけの映画なのだ。
ところが、不可解な事実がつぎつぎと明るみになっていって、気がついたら怖ろしい仕掛けに観客は巻きこまれる。
難をいえば、後半がややサービス過剰でわかりやすく作ってあり、興行的にはそれが必要なのかもしれないが、押さえた筆致の前半とのバランスがやや悪いように感じられる。
「大変気持ち悪い映画だが、私の好きな映画の一本に入れてもいいな」
という気分になっている。
前半を観て、ひとりで観るのはとても怖ろしくて中断してしまったのだが、結局気になって、あとで最後まで観てしまった。
今夜はきっと、夢をみる。