作品も増えて、「栗ごはん」というテーマで書かれたショートテキストが4編、集まりました。
どれも個性豊かで、楽しかったのです。
新規参加のひとり・山浦一朗くんは、商業ライターの経験もあるということで、なかなか緻密で達者な筆つかいの作品を読ませてくれました。
ひとり、栗ごはんを炊いて食べる男の、そのこだわりに満ちた食べ方の描写を丹念に、しかしユーモラスにおこなっている作品で、それはたぶん山浦くん自身を投影したものだろうと思いますが、やや皮肉っぽい笑いを含んだ俯瞰した客観的視点がおもしろい作品でした。
終わってからメッセージをもらって、
「想像以上に面白かったです。また参加したいと思います」
とあったのがうれしかったですね。
だからこのゼミ、おもしろいんだって!
もうひとりの新規参加者・ふーさんは、どのくらいの執筆歴をお持ちなのか聞きそびれてしまったんだけど、詩作につうじるとても軽妙なリズムの文章が心地よく、たとえば日本文学史的にはあまり高く評価されてはいないけれど私にしてはめずらしく日本人作家として好きな片岡義男の、まったく重厚ではないけれど読んでいてとても心地よくてまるで海辺のベランダで風に吹かれているような気分になれるテキストのような感じがありました。
もっと読んでみたい書き手のひとりです。
常連の知念さんと奥田くんは、もうこのところほんとにクオリティの高さとそのユニークさには信頼がある感じがあって、わざわざ書かなくてもいいくらいです。
でも書いておくと、知念さんのは驚くべきことに、
「Story based on truth」
ということでひっくり返ってしまいました。
まったくおそるべき底知れぬ作家です。
奥田くんのは昔話の猿蟹合戦の設定を借りた「前回までのあらすじ」という作品で、これはもうコンテンポラリーというか、純文学の域をこえているシュールな作品で、わけのわからなさと、しかしそれでいて気持ちのいい落とし所を兼ね備えた秀作でした。
みなさん、すごいなー。
私も小説家を30年やってますが、世の中にこれほどの才能がたくさんあるのだと知ると、愕然としつつも、すべての人は表現者として優れた存在になりうるという自分の確信が強まって、うれしくなるのです。
あなたも参加してみませんか?
ほんとにおもしろいですよ。
◎10月開催の次世代作家養成ゼミ(10.16/23)
身体性にアプローチするという斬新な手法でテキスト(文章/文字)を使った自己表現を研究するための講座。オンライン(zoomシステム使用)のみのクラスで、単発参加も可。