2016年10月12日水曜日

音楽:ジョン・ルーサー・アダムズ「Become Ocean」

現代音楽の巨匠(といってもいいよね?)ジョン・ルーサー・アダムスをつづけて何曲か聴いています。
「The Wind in High Places」にしびれて、そのあと「Become Ocean」を聴いてしびれて……どちらかのレビューを書こうと思ったんだけど、まずはピューリッツァー賞もとった「Become Ocean」ですかね。
「The Wind ……」も近いうちに書くかもしれませんが。

演奏はルドヴィック・モルロー指揮のシアトル交響楽団です。
初演が2013年というから、あたらしいですね!
つい最近の曲といっていい。
ビートルズとかストーンズとか、ボブ・マーレイとか、あるいはマイルス・デイビスとか、そういうものよりあたらしい、まさに「いま」の音楽です。
文字どおりの「現代」音楽です。
コンテンポラリーです。

ジョン・ルーサー・アダムスはこの曲をジョン・ケージの書いたテキストの文言に触発されて書いたそうです。
それが「Become Ocean」。
タイトルがしめすとおり、また聴いてわかるとおり、「海」を音楽にしています。

海をテーマにした曲はたくさんあります。
が、この曲ほど「海そのもの」を表現した音楽はないんじゃないでしょうか。
海の豊かさ、美しさ、シンプルさ、複雑さ、その生命力、パワー、静かさ、荒々しさ、そういったことをすべて表現しようとしたアダムスの情熱を感じます。
その情熱が、熱に流されることなく、注意深く音響として構成され、42分13秒という1トラックの途切れることのない曲になっています。

私はただそこに身を投じ、波間に浮かぶときのように海のバイブレーションに任せて漂います。
ときに荒々しくもみこまれたり、静かに沈んだり、海面から差しこむ太陽の光線を海底から見上げたり、あるいは海鳥の視線になって空から見下ろしたり。
42分の音楽の旅を楽しみます。
いや、楽しむという軽いことばはふさわしくない感じがします。
それは一種の時間体験です。

私も自身が演奏者となって、たとえば「音楽瞑想」という60分前後のコンサートをおこないます。
そのとき願うのは、聴いているみなさんにある種の体験を提供したい、ということです。
ひょっとしてアダムスもそのような思いでこの曲を書いたのかもしれない、などとちょっと自分を重ねあわせてみたりしました。

「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演@明大前(10.22)
深くことば、静寂、音、そして空間とご自分の存在そのものをあじわっていただく「体験」型公演です。朗読と音楽、沈黙、そして音楽瞑想。明大前キッド・アイラック・アート・ホールにて、20時開演。