「よくそんなにたくさん書けますね。いつ書いてるんですか?」
というものがあります。
けっこう頻繁に訊かれるので、自分でもちょっとまじめにかんがえてみました。
たしかに書くのは速いのです。
タイピングそのものがそこそこ速いのです。
ローマ字入力ではなく日本語カナ入力です。
これは小説家になってまもなく、ワードプロセッサで原稿を書くようになった当時からそうなのです。
しかし、私がたくさん書けている理由は、それだけではありません。
短時間に集中できる、ということが大きいと思います。
職業小説家になってしばらくは、丸ごとほぼ一日を書くことに使うことができました。
なのでけっこうだらだら書いていたのです。
だらだら書いていても丸一日それに使えるわけですから、けっこう書けます。
職業小説家時代に書いた本は30冊以上あると思います。
商業出版の世界から距離を置き、オリジナルコンテンツを自力で作るようになってからは、それだけで生活することは難しくなったので、一日中書くことに時間を使うというわけにはいきません。
ほかの仕事をしながら、家事をこなしながら、ネットにアクセスしながら、メールやメッセージにレスポンスしながら、人と会いながら、出かけながら、その合間に書くのです。
数分とか数十分というほんのちょっとした時間に、さっと集中して書く。
これはやはり、そのための訓練がものをいっています。
短時間でなにかに集中し、またパッと切り替えて別のことに向かう。
そのための訓練としては、マインドフルネスの練習がもっとも効果的です。
ごちゃごちゃした余計な思考を追いだし、いまこの瞬間の自分自身のありように目をむける。
呼吸法や瞑想もそれに役立ちます。
四年前にはじめた韓氏意拳も非常に有効です。
とても深いマインドフルネスと身体的気づきの世界にはいっていくことができます。
いまこの瞬間の集中をさまたげるのは、思考です。
なにかをかんがえたり、思いだしたり、想像したり、反芻したり、心配したり、といった脳内思考が、集中力をいちじるしく阻害します。
たぶん私といっしょに生活するとわかると思うんですが、けっこうあれこれと動きまわり、いろんなことをちょこまかとやっています。
コーヒーをいれる、ご飯を作る、編み物をする、ネットに向かう、ピアノを弾く、本を読む、人と会う、写真を撮る……その合間に、瞬間的に集中して執筆もします。
いつも開きっぱなしになっているMacBookにさっと向かい、つぎの瞬間にはもうキーを叩いています。
5分もあれば原稿用紙換算で1枚くらいは十分に書けます。
1時間あれば10枚くらいは書けるのです。
集中できれば。
この記事も、書きはじめていま、20分もたっていないと思います。
これを書いているのは2016年8月10日の午後2時22分。
書きはじめたのは午後2時をすこしまわったころ。
この記事の文字数は、この時点で1200枚をすこし超えていますから、原稿用紙換算では改行や空白もいれれば4枚弱くらいでしょうか。
このペースだと1時間に10枚は十分に書けますね。
しかし、1時間ずっとコンピューターの前にすわっていられることはめったにありません。
こまぎれの時間を使ってどんどん書くのです。
もちろん、書きたいことがあるから書くんですが。
よく「書きたいことがわからない」とか「書きたいことはあるけど、どう書けばいいのかわからない」という人がいます。
そういう人には、どうすればいいのか、いっしょにかんがえてみましょう、と提案しておきます。
次世代作家養成ゼミというオンライン講座がありますから、興味がある方は一度参加してみてください。