急にブンブンと騒がしくなったと思ったら、巣箱のなかから次々とミツバチが出てきて、空中をものすごい羽音を立てて飛び回りはじめた。
巣箱のまわりも、最初にやってきたときのような蜂球みたいに密集して、しかもなかからどんどん出てきてしまう。
さては羽根木の巣箱が気にいらなくて捨てていってしまうのだろうか、とハラハラしながら見ていた。
しばらくすると静かになったが、どうやら出てきたミツバチ群はどこへやら飛び去ってしまったようだ。
何匹か残って巣箱を出入りしているが、あきらかになかはすっかり寂しくなっているようす。
羽音もまったく聞こえない。
後藤さんにメッセージを送って、ようすを知らせて相談してみたら、引っ越し先の巣箱が気にいらなくて出ていってしまうと、ほとんどもどってくることはないとのこと。
ちょうど午前中にミツバチの誘引剤が届いたばかりだったので、ひとつはすでに箱にくっつけてあるが、もうひとつ下のほうにくっつけてみることにした。
しかし、効果があるかどうかは不明。
ずっとようすをうかがっていたら、お昼すぎになって、なんとなく巣にはいっていくミツバチの数が増えているような気がした。
それでもポツリポツリなので、飛び去ってしまった巨群はとてももどってきたように思えない。
そのしばらくあと、縁側で仕事をしていた私の耳に、最初のときに聞こえたものすごいブンブンする音が突然聞こえてきた。
見ると、朝のときとおなじようにすごい数のミツバチがブンブンと飛びまわっている。
巣箱の入口にはギュウギュウと密集して、よく見ればどんどんなかへとはいっていくではないか。
これはまちがいなく、飛び去った巨群がそっくりそのままもどってきたのだ。
よかった。
今日、後藤さんが、専門の養蜂業者に訊いてくれた話によれば、引っ越ししたあと、その周辺の環境や地形などを調べるためにみんなで出かけていって、それからまた帰ってくる、というような行動があるらしい。
昨日のはそれだったのかもしれない、ということだった。
いずれにしても、もどってきてくれてうれしい。
そして、入口を出入りするミツバチをよく見てみたら、後ろ足に黄色い花粉ダンゴをくっつけて帰ってくる者が何匹かいるではないか。
これがより頻繁にもどってくるようになったら、もう心配はないとのことだった。
たぶんそうなるだろうと思っている(希望)。
それにしても、かなりあわてさせられた一日だった。
生き物を相手にしているわけだから、人間の都合のいい思惑どおりにいかないのは当然だろうとは思うけれど。