2014年12月25日木曜日

榎本英剛『本当の仕事』

以下は書評ではありません。
私的な覚書に近いものです。

というのも、コーチングの第一人者として知られる榎本さんによる、一読して「本気/本音」だとわかる本書については多くの人が関心を寄せておられるだろうし、すぐれた書評も書かれることだろうと想像できるので、私はこの本を手に取るにいたったごく私的な経緯と、榎本さん個人との関わりについて、自分自身の覚書として書きのこしたいと思っている。
もしそのことで榎本さんになにか不都合なことが起きなければいいがと願っているのだが、もしそういう事態になった場合は、この記事を丸ごと削除させていただきます。
身勝手な都合をどうぞご容赦願いたい。

今年2014年の12月あたまに、NVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)の国際集中合宿である「IIT(International Intensive Training)」というイベントが清里で開催されようとしていた。
2007年ごろから私もゆるやかに関わっていた日本のNVCトレーナー招聘チームのコアメンバーがイベントをオーガナイズし、そのほとんどのメンバーも参加するという。
また、コアメンバーが種をまいてきたつながりのなかで、年末のこの時期に関わらず、全10日間という日程に関わらず総勢100名という参加者が結集することとなった。

私はある事情があって最後の瞬間まで参加を逡巡していたのだが、結局、爪の先を引っかけるような未練がましい形でなんとか参加することになった(多くの皆さんにご迷惑をおかけし、多大なサポートをいただいたことに感謝してもしたりない)。

そんなわけで、かなり(自分のなかでの勝手な決めつけとして)居心地の悪い気持ちで参加したIITなのだが、なにしろ100人という大所帯なので、情報伝達やお互いのコミュニケーションの便宜のために、6名前後の「ホームグループ」という小グループに小分けされた編成が作られた。
その私が所属するグループに榎本英剛さんもいらしたのだ。

私は不勉強にも、榎本さんのことを存じあげなかった。
が、私が榎本さんと同グループになったということをいうと、自然にいろいろなことを教えてくれる人が出てきた。
いわく、日本のコーチングの第一人者である、いわく、藤野のトランジションをリードしている、その他云々。
えらい人といっしょになったな、というところだが、実際にはすでに榎本さんとは口をかわしていて、とてもフランクで誠実な方という印象を受けていて、私のこともなんだか正直にかっこわるいようなことも含めて話してしまっていた。

なにかもう一定の地位を築いた方というより、いまだ自分自身を磨きつづけ、そのことによって自分の周辺や社会に貢献したい、というエネルギーをひしひしと感じとれるような、とても純粋な方のような印象を受け取っていた。

合宿の初日の夜、おなじ部屋に宿泊することになったのだが、榎本さんがパソコンを電源につなごうとすると、ACアダプターのコンセント部分のコードを家に置き忘れてきたことに気づかれた。
パソコンを充電できないことに困っておられるのを見て、私はひょっとしてと思って、持参のビデオカメラのACアダプターのコンセントコードをお貸しした。
すると、うまい具合にそれが使えたのだ。
けっこう大事な仕事のツールの一部を忘れてきてしまったうっかりな榎本さんに親近感を覚えると同時に(私もかなり大きなポカをしばしばやらかす)、彼にいくらかでも貢献できたことがうれしかった。

合宿の最終日に、自分の50歳の誕生日にこの本が出版されます、といって、ホームグループのみんなにひとりひとりにあてたメッセージ入りの見本をプレゼントしてくれた。
私も長らく商業出版で生活していたので知っているのだが、自著とはいえだれかに本を贈呈するというのは、それはそのまま自分が自費で買った本を差し上げる、ということだ(ただでもらえる見本は10冊程度しかない)。
著者は出版社から無限に無償で自著を提供してもらっているように思っている人がいるかもしれないが、そんなことはない。
自著とはいえ、著者は自分の本を人にあげたいとき、それを版元から多少の割引はあるとはいえ、自腹を切って買うことになる。

『本当の仕事 自分に嘘をつかない生き方・働き方』榎本秀剛/日本能率協会マネジメントセンター/1,500円

本書は人の一生の大部分をしめる「仕事」にかんする、榎本さんなりの重要な考察がこめられた本だ。
多くの人にとって気づきやヒントが得られるだろうと思う。
また私自身は、これをIITの期間中に贈呈していただいたことと関係があるかもしれないが、NVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)との関係性において別の角度から読みとこうとしている自分自身に気がついた。

「自分に嘘をつかない生き方・働き方」は、そっくりそのまま、NVCにおける「自分のニーズに深くつながる」ことに通じている。
榎本さん、ありがとう。
近いうちにまたお会いして、ゆっくりお話できることを願っています。
私もまた、いまだ、自分の「本当の仕事」についてなやみ、かんがえつづけている者のひとりです。