ホールといっても小さな会場で、そこに作曲家のツィンマーマン氏夫妻も来られていたし、高橋アキさんら演奏家や現代音楽の作曲家、評論家の方々もお見えになっていて、はじまる前から熱気あふれる雰囲気だった。
プログラムは全曲、ヴァルター・ツィンマーマン氏の曲で、前半は小品を4曲、全部で20分くらいの演奏。
そのあとすぐに休憩があって、来日されているツィンマーマン氏による自曲解説。
そして後半——というよりメイン部分は、大曲「Biginner’s Mind(1975)」の作曲家の指示によるジェスチャー付きのオリジナル版世界初演。
ツィンマーマン氏の曲は、私は初めて聴いたのだが、現代曲にしてはどこか懐かしさ・郷愁を感じさせるようなところがあって、これはなんだろうと探っていて、たぶん1950年代くらいの現代音楽が欧米で急速に進展し、そして拡散していった時代の空気ではないかと思いあたった。
それを、現代の、いまの時間を生きている中村和枝さんが、いきいきと生々しい所作で演奏している、そこのところが秀美であったし、繊細さと大胆さ、単純さと複雑さといった、多様な表現がひとつになっていていとおしく貴重に思えた。
おこがましくも、私の毎日配信している即興演奏「音楽瞑想」にも似た音がときおり現れ、勝手な親しみを覚えた。
それにしても、これだけの大曲・難曲を発表する準備というのは、並大抵のことではなかったことだろう。
また、けっして最高とはいえない門天ホールという演奏環境のなかで、最後まで集中して楽しく演奏された中村和枝さんのその才能と努力(も才能のひとつか)にたいして、絶賛、敬意を表したい。
私も見習いたいといいたいところだが、無理。