2011年9月2日金曜日

次世代作家養成塾:習作&講評「真夏の夜の人魂」奥田宏二

今回は作品内容ではなく、枝葉末節の部分を解説します。たまたま奥田宏二の作品をネタに使わせてもらうだけです。他意はありません。
私が小説を書きはじめた時代(もう三十年以上も前だ)は、小説を書くというと原稿用紙に書いていました。
原稿用紙というのは、「印刷原稿」を書くための用紙のことです。
印刷された本をつぶさに観察すればわかりますが、活字印刷にはさまざまなルールが存在します。たとえば、段落の最初の一行めは一字下げる、とか、「。」や「、」は行頭に来ない、といったようなことです。そのルールを守って原稿を書いたわけです。
原稿用紙はまもなくワープロやコンピューターのプリントアウト、そしてデータ原稿へと移っていきましたが、印刷原稿としてのルールを遵守するのは職業作家の決まりでした。それは編集者から教えられましたし、自分でも勉強しました。

この養成塾でも、最終的には「本」になることをめざします。
「本」というのは紙の本に限りません。電子ブックも含まれます。
いずれにしても、紙の上で読まれるのせよ、モニターで読まれるにせよ、「日本語の本」としての体裁を持ちます。たとえば、縦書き、ルビ付きといったようなことです。
養成塾の皆さんも、パソコンに向かうにせよ、スマートフォンで書くにせよ、「印刷原稿を書く」という意識を持ってほしいと思います。

奥田宏二のこの作品を、印刷原稿のルールに従って書き直すと、こうなります。《 》内はルビですが、ルビ記号はとくに決まっていません。暫定的に《 》を使います。印刷されるときには、《 》内の文字がルビとして脇に出されます。

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 彦一が藪《やぶ》に飛び込んだ音と転倒した音が重なった。振り返ると藪の向こうに青白い炎がチラチラと見え隠れしている。
「ひぃ」
 腰が抜けかけて四つんばいで逃げようとするが気ばかり急いて再び転倒する。逃げるのを諦めその場で頭を抱え何とか人魂をやり過ごそうとした。
 なんでこんな目に遭うんだ。
 ガタガタと震えているとせ……せ……細く消えそうな声が近づいてくる。確実に俺を追いかけてる。彦一は殆ど気を失いそうになった。
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(以下、講評つづきと作品本体は養成塾のメールマガジンで掲載しています)

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