毎月一回、三軒茶屋のライブカフェ〈四軒茶屋〉で開催しているげろきょこと現代朗読協会のオープンマイクでは、出演者同士あるいは観客から出演者にたいしてユニークな方法でフィードバックをおこなっている。
ステージでだれかがなにかを表現したり発表したとき、私たちはかならずそれにたいして「評価」とか「批判」「批評」といった態度を取ってしまい、ときにはそれを口にしたり、当の相手にむかって伝えることがある。
経験がある人なら覚えがあると思うが、自分がおこなったことに対して批判されるのは、けっこう痛いものだ。
なにしろ、自分はそれなりに懸命におこなったわけだし、失敗したとしたらそれは自分がもっとも残念に感じていることだからだ。
さらに自分ではうまくいったと思っているのに、思いがけず批判されたり非難されたりするのは大変つらい。
そういった経験が重なって、せっかく楽しくはじめたことを途中で投げだしたり、あきらめたりする人がとても多い。
表現の舞台をつづけることをめざしてまじめに取りくんでいる人のなかには、それがもとで心の病にかかってしまうような人もいる。
そういう人を私はたくさん見てきた。
だから、現代朗読協会が主催するオープンマイクでは、そのようなことが起こらないようにしたいと思ったのだ。
表現の場においては、表現者がいまその瞬間の自分自身につながって、のびやかに、無防備にやれたときがもっとも能力が発揮されるし、また成長もいちじるしい、と私はかんがえている(実際にそういう人たちを見てきた)。
「ダメ出し」とか「反省」といった言葉が好きな人が多いが、そのようなものからはけっしてよいことは生まれないし、表現者の尊厳もそこなわれる。
そこでげろきょのオープンマイクでは、共感的コミュニケーションの考え方を取りいれている。
相手を評価したり分析したりラベリングするのではなく、ただ受け取り、自分のなかで起こったことを正直にただ伝える。
なにかを受け取ったとき、私たちの内側ではさまざまなことが起こる。
社会的なものさしや外部基準に照らしあわせてそれがいいとか悪いとかいう評価ではなく、ただ自分のなかで生まれた感情や味わい、動きといったものをつかまえて、相手に伝えるだけだ。
とはいえ、これはなかなかむずかしいことで、評価することに慣れている私たちにとってすぐにやれるものではない。
そこで、ちょっとした工夫をしている。
写真の紙はフィードバックシートと呼んでいるものだ。
幅5センチくらいの小さな紙で、そこに味覚のマトリックスが印刷されている。
表現を受け取った人は、自分の内側を見てぱっと直感的に「甘味は3くらい」「苦味は2くらい」と、チェックを入れて、出演者に返すのだ。
出演者はそれを見て、みんなに自分の表現がどのように受け取ってもらえたのか、なんとなくわかる、という仕組みだ。
その仕組みは、実際にどのような味覚としてとらえられたのかが重要なのではなく、そのフィードバックシートを書きこんでもらった全員に自分の表現が評価ではなくて受け取られたことが実感できる、ということだ。
実際にシートがみんなから返ってくると、なんともいえない暖かな気持ちになる。
これは経験してみなければわからないかもしれない。
また、シートを書く側も、すべての出演者にたいしてそれをおこなうわけだから、すべての人の表現を自分が受け取り、自分のなかを観察して、それを伝えるという、共感的なつながりの場がそこで生まれる体験をすることになる。
そのように「共感」というものを表現の場にいかに取りいれていくのか、あるいは音読療法のようなセラピーの場でもどのように生かすことができるのか、まだまだ工夫は足りないし、まだまだできると思っている。
みなさんにも体験してもらいたい。
◎四茶げろきょオープンマイク(10.20)
10月20日(火)19時から、三軒茶屋のライブハウス〈四軒茶屋〉にて、毎回大好評のげろきょ(現代朗読協会)&四茶共催オープンマイクの第7回を開催します。評価や批判のない安心の場であなたも表現してみませんか? 朗読以外のパフォーマンスも歓迎。