2018年2月2日金曜日

いいぞ、YAMAHA ボーカロイドキーボード YKB-100

先日、立川をぶらぶらしていたとき、ビルの上の階のほうに「イシバシ楽器」の看板を見つけて、こんなところに楽器屋があったんだと立ち寄ってみることにした。
まあ、立川にはなんだってあるので楽器屋だってあるのは当然なんだけど、なんとなく気が引かれたのだった。

気が引かれたのには理由もあって、このところ、MacBookにつなぐMIDIコントローラー――つまり鍵盤(キーボード)――を探していたのだった。

私はピアノ弾きで、よく朗読と共演することがあるのだが、ピアノがない場所だといろいろ苦肉の策を講じることになる。
三軒茶屋の〈カフェ・オハナ〉で共感的コミュニケーションを隔月のペースでおこなっていたが、そのときにはかならず最後に朗読と音楽のミニライブもやっていた。
オハナにはピアノがないので、なにかしらの楽器を持ちこむことになる。

あるいは数年前まで明大前のブックカフェ〈槐多〉でやっていた「槐多朗読」も、楽器を持ちこんでいた。

持ちこむとしたらデジタルピアノがもっとも理想的なのだが、いかんせん重い。
ひとりで運ぶのは無理。
車が使えるときはそれで運んだりしたこともあるが、重いし、そして場所を取る。

軽量のシンセサイザーを使っていたこともある。
それ自体、音も出るし、MacBookにつなげば多彩な音源や効果音も使える。
ただ、問題がいくつかある。

鍵盤がピアノタッチではなく――ハンマーアクションではなく――軽いオルガンタッチだ。
ようするにスイッチだ。
いくらかタッチレスポンスはあるが、せいぜい音量を変えるくらいだ。

また、軽量にこだわると、鍵盤数も少なくなる。
通常のピアノは88個の鍵盤があるのだが、小型のシンセは60個とか50個とかになる。
カバーできる音域は4オクターブ前後で、それより低い音や高い音が必要なときは、スイッチで音域をスライドさせて使うことになる。
ほかにもパワードスピーカーも必要で、それなりの荷物になる。

リュックサックひとつで運べるようにするとなると、最近ではおもちゃのような鍵盤(MIDIコントローラー)をMacBookやiPadにつないで使うようになっていた。
あるいはごく最近、MacBookで使っているオーディオアプリ「Logic Pro」をiPadからコントロールできる「Logic Remote」というアプリが出て、iPadに表示させたバーチャル鍵盤を演奏に使うこともやっていた。

いずれにしても、非常に不自由で、ピアノのように自由に演奏できるというわけではない。


上記の機材のほかに、私はピアニカ(鍵盤ハーモニカ)を使うこともあった。
ピアニカは自由に動きまわれて、電源も不要、演奏者の身体性を音に乗せることもできて、場所によっては非常に効果的に使うこともできた。
ただ、意外に音がでかいのと、私自身がピアニカという楽器に慣れていないということがあった。
ピアニカ奏者じゃないからね。

立川のイシバシ楽器のキーボード売り場をひととおり冷やかし、なかに一台、これは使えるかもというキーボードがあったのでメモを撮ったりして、帰ろうとしたとき、ふと変な楽器が目にとまった。
それがYAMAHAのボーカロイドキーボードだった。

名前はともかく、ショルダー型というところが気になった。
ショルダー型キーボードは前から使ってみたいと思っていて、実際にローランド製のものを触ってみたこともある。
が、キーボードというよりシンセサイザーで、音作りもできるタイプで高価だったし、重かった。

実際にプロのミュージシャンが何人も使っているのを見たこともある。
おもにフュージョン系の音楽で、ハービー・ハンコックやチック・コリア、ジョージ・デュークが多用していた時期がある。
しかし、現在は生産中止となっている。

ショルダー型はピアニカのようにステージ上を動きまわれる点が最大の利点だ。
鍵盤奏者は通常、楽器の前にどでんと座っていて、動くことができない。
動けないから、その欲望が「楽器をまわりにたくさん並べる」という方向ににじみ出したりもする。
ショルダー型だと、ギタリストやベーシスト、リード奏者のように、ステージ上を自由に動きまわることができる。

実際に私も、ピアニカを持ったときの自由さには味をしめている。
朗読者とからんで、しばしば嫌がられたりもする(汗)。

ヤマハのボーカロイドキーボード(以下「ボカロキー」と略すことにする)の展示品を持ってみたら、驚くほど軽い。
スピーカーにつながっていたので、音を鳴らしてみた。

なるほど「ボーカロイド」という名称がついているだけあって、鍵盤を押すとあの「初音ミク」みたいな女の子の合成音声で発音する。
ちゃんと歌詞を発音するようになっていて、手元の液晶パネルに表示されている歌詞を、キーを押すごとに順番に発音していく。
当然単音だが、メロディを弾くとそのとおりに「歌って」くれる。
ここが「売り」らしい。
しかし、その点にかんしては、

「私にはなんの興味もない」

ボーカロイドのほかにも音源がいくつかはいっているようで、たとえばエレピの音も鳴らせる。


鳴らしてみた。
普通にキーボードとして演奏できる。
ピッチベンドもあって、ギターのチョーキングのような音程変化もスムースにつけられる。
楽器をショルダーベルトで肩からさげて、右手で鍵盤を、左手でピッチベンドやモジュラーホイールなどのコントローラーを、という演奏スタイルは、ギター奏者のようで軽快だ。
ただし、このスタイルだと右手演奏しかできない。

ピアノのように両手で演奏したければ、弁当箱スタイルで下げるか、素直にテーブルなどの上に平たく置くことになる。

問題は、MIDIコントローラーとして使えるのかどうか、ということだ。
家に帰ってからいろいろ調べてみたら、どうやら使えるらしいことがわかった。

それにしても、ネットでいろいろ調べてみる過程で、出てくる試奏映像はほとんどすべてがボーカロイドに焦点があてられていて、演奏するメロディどおりにボカロが歌ってくれるとか、歌詞を自分で入力できるとか、そこをはしゃいでいるものばかりだ。
そんなものに、

「私にはなんの興味もない」

しばらくして手元に実機が届いたとき、真っ先にトライしたのは、MIDIコントローラーとしてiPadやMacBookに接続し、音源を鳴らせるかどうか、だった。

結論からいえば、できる。
設定にちょっと手こずったけれど、大変軽快なMIDIコントローラーとして使えることがわかった。
とくにiPadに接続するときは、ブルートゥース経由でワイヤレス演奏ができる。
そして、電池駆動も可能だ(単三乾電池6本)。

MacBookに接続するときはUSB経由になる。
有線だが、Macにセットされている豊富な音源やソフトを、このボカロキーから演奏できるのは、快適そのものだ。

ひとつだけ問題があって、それはキーボードがフルサイズではなくミニサイズで、音域も4オクターブしかないということだ。
しかしそれはピアニカとおなじなので、受け入れて、それで自由に演奏する練習をするしかない。

詳細なレポートは後日あらためて書くが、現時点でベストな使用スタイルは次のものと思われる。

・iPadにブルートゥースで無線接続
・iPadではGarageBandを立ち上げる
・ブルートゥースでモバイルスピーカーをiPadに接続(あるいはiPadの内蔵スピーカーをそのまま使う)
・電池駆動

自由になったキーボーディストを満喫できる。
そしてデスクトップでは電源とMacBookにつないで、そのまま音楽製作ができる。


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