2017年6月18日日曜日

人の感情の影響を受けないために

毎月、実家に帰るたびに開催している「実家音読カフェ」を、今回も実施した。
このところ、毎回参加者が増えつづけていて、「これ以上増えたらどうしよう」と心配していたのだが、杞憂だった。
今回の参加者は4人と、落ち着いてやることができた。

そこで出た話題。
老人ホームに読み聞かせのボランティアに行っていたんだけど、行くたびにこちらの気持ちが落ちこんでしまって、だんだん耐えられなくなってやめてしまった、ということをいう人がふたりいた。
みなさん、きちんとこちらの朗読をきちんと聞いてくれるんだけど、その前後の交流のなかで、認知症が進んでいる人のぼんやりしたようすや、起伏の激しい感情をしめす人を見ていると、こちらまでその影響を受けてしまって、動揺するというのだ。

人間にはもともと、相手の感情や動作、姿勢を、無意識に写し取ってしまう心の働きがある。
社会的な動物として必要があってそういう働きを持っているのだが、ときにそれはやっかいなことを引きおこすことがある。

そんなときはどうすればいいか。
その場を離れる、逃げる、というのもひとつの方法だが、せっかくボランティア活動に来ていてみなさんのお役に立ちたいと思っているのだから、落ちこんだり動揺することなく、自分は自分としていきいきとふるまっていたい。
こんなとき、共感的コミュニケーションが役に立つ。

共感的コミュニケーションでは、相手の感情やふるまいに注意を向けるが、それはそのさらに奥にあるニーズを知るためであって、目的はあくまでニーズにつながることだ。
なので、相手がどのようなふるまいや感情表現をしていても、こちらはその影響を受けないようにする。
相手の言動や感情は、相手のニーズが満たされたり満たされなかったりしているために現れてきているもので、こちらとはなんの関係もない。
もしこちらが相手とつながりたければ、言動や感情レベルではなく、ニーズレベルでつながるようにする。
つまり、相手がなにを大切にしているか、どんなことを必要としているのか、そのことに注意や好奇心を向けていくのだ。

そのとき、こちらはこちらのままでよく、相手の言動や感情に振り回されることなく、ただ相手に好奇心を向けていくだけだ。
こちらがつながろうとしている態度が相手に伝われば、相手は落ち着いたり、言動や感情に変化が起きたりするかもしれないし、もしそうなって双方のあいだにつながりが生まれたら、こちらもきっとうれしくなるだろう。
おたがいに自分のニーズに気づきつづけ、よりいきいきと交流することをめざすのが、共感的コミュニケーションだ。

今回の参加者がせっかくのボランティアをやめてしまったと聞き、その理由を知ったとき、私はとても驚いてしまったのだ。
なぜなら、私も高齢者を相手の活動のチャンスをたくさん持っているけれど、落ちこんだり動揺するどころか、むしろこちらのほうが元気になり、あたたかく幸せな気持ちで会場をあとにすることがほとんどだからだ。
相手が高齢者だろうが子どもだろうが、本来、いっしょにやるワークはそういうものだろうと思っていたので、びっくりしたのだ。
だから、上記のような話をさせていただいた。

もちろん共感的コミュニケーションを身につけるにはそれなりの理解と練習が必要だ。
しかし、ボランティアワークでみなさんの役に立ちたいと思っている人には、自分がいきいきと活動をつづけていくためにも、共感的コミュニケーションを身につけてほしいと思うのだ。

ボイスセラピー講座@国立(6.24)
呼吸や声を使って自分自身や身近の人を癒し活力を養うボイスセラピーの概要を学び、身につけるための講座です。この講座の受講修了が音読トレーナーの資格取得講座の受講要件となります。6月24日(土)10時からJR国立駅徒歩5分の会場にて開催。