村田活彦さんが、昨年、パリの世界大会に行って、日本でもぜひ開催したいと準備をすすめてきたもので、10名以上のスタッフが協力しあって実現にこぎ付けたものだ。
私も村田くんの熱意に触れてぜひお手伝いしたいと申し出ていて、開催当日はビデオ撮影係として、詩人でポエトリーリーディングをやっている黒川武彦くんとタッグを組んで参加してきた。
参加者は総勢37名、お客さんも50人近くはいっただろうか、大変熱気にあふれたイベントとなり、大成功だった。
スタッフも参加者も若い人が多く、私のようなじじぃはちょっと気がひける部分があったのだが、それなりに寄与できてよかった。
それとは別に、現代朗読の野々宮卯妙が参加者としてエントリーしていて、ひときわ異質な存在として目立っていたのは、特筆にあたいする。
ポエトリースラムは、観客のなかからランダムにくじ引きで審査員を5名ピックアップし、彼らの得点によって予選から準決勝、決勝へと勝ちすすんでいくという方式で、今回、優勝者はパリの世界大会に出場する権利を得て、その航空チケットも支給されることになっていた。
まず予選だが、37名を9名から10名のグループ4組に分け、それぞれから2人ずつ選抜される。
見ていると、審査員といってもただの観客なので、点数にはかなりバラつきがあったり、主観的であったり、また会場の雰囲気や流れで大きく左右される。
そこがまたおもしろいのかもしれない。
野々宮卯妙は3番めのグループに登場し、なんとか2番手で予選通過。
私は会場の雰囲気を見渡していて、予選通過すら難しいのではないかと思っていたので、これは意外だった。
参加者と観客の半分以上はポエトリーリーディングの世界でつながっている人たちで、各地から参加していた。
これは村田くんの努力のたまものだろう。
それに対して、ちょっと異質な雰囲気でラッパーの人たちが残り3分の1くらいを占めていた感じ。
このなかで現代朗読の野々宮卯妙は完全に孤立無援といった感じで、コールされてもだれも知らない、拍手も起こらない、そんなアウェイな雰囲気のなかで、しかし例によって堂々たるパフォーマンスをおこなって、会場の度肝を抜いた。
それにしても、ポエトリーの人たちもラップの人たちも、熱気むんむんで、個性的で、多様性があって、予選から決勝まで60以上のセッションがあり、午後2時半から10時半までという長尺のイベントだったにもかかわらず、まったく飽きることなく楽しませてもらった。
これはすごいことだと思う。
準決勝は4人ずつのグループがふたつで審査され、グループからは1人しか選出されない。
野々宮は最初のグループで惜しくも2番手となり、落選したかに見えたのだが、決勝に進むのは3人。
つまり、次点の者が残ることになっていて、野々宮はそれに引っかかった。
ファイナリストである。
決勝ではポエトリーリーディングの岡野康弘さん、ラップの大袈裟太郎さん、そして現代朗読の野々宮卯妙の三つ巴となった。
野々宮は惜しくも優勝をのがしたが、みなさんに相当なインパクトを残したことは間違いない。
優勝した岡野さん、惜しくも僅差で次点だった大袈裟太郎さん、お疲れさまでした。
というのも、決勝はひとり3セット、合計9セットの審査がおこなわれるからで、かなりハードだ。
それにしても、村田活彦さんを筆頭とする運営陣の働きは見事だった。
これだけの大きな、そして複雑なイベントを、まったく滞りなく進めて大成功に導いたのは、大きな功績だと思う。
みなさん、お疲れ様でした。
そして参加者のみなさん、観客として盛りあげてくれたみなさん、私もたくさん楽しませていただきました、ありがとう。