キッドのホールでは、地下のブックカフェ〈槐多〉の「槐多朗読」もふくめて、何年か前から「沈黙の朗読」を断続的におこなってきましたが、今回、「音楽瞑想」もプログラムに加えてひとつの公演としておこなうことになったのです。
ギャラリースペースにピアノが設置され、それを試弾させてもらったところ、古くはあるけれどピアノの状態がいいことと、ギャラリースペースが大変すばらしい音響空間であることがわかったので、さっそくこのプログラムを企画した、というわけです。
「音楽瞑想」はディープリスニングというタイトルでもう10年以上前から試みていたもので、特徴としては完全な暗闇のなかでピアノの即興演奏をおこなう、というものです。
キッドのギャラリーもほぼ完全な暗闇にできます。
開演が20時、開場が19時半だったので、19時前に行き、ホールの早川くんと工藤くんといっしょにセッティング。
椅子をならべたり、音響を確認したり、エアコンや照明の扱いを検討したり。
ギャラリーではちょうど彫刻家の脇谷徹さんの素描展をやっていて、壁面にびっしりと展示された素描作品群のなかでパフォーマンスをおこなう形になります。
入口の非常灯も暗幕でつぶしてもらって、照明を消したら、ほぼ暗転状態。
それを確認して、準備終了。
19時までは通常のギャラリー展示の時間だったので、素描展を観に来た方がいらしたりしたんですが、そのなかの女性の3人組のひとりが見覚えのある方で、声をかけてみたらやはり知っている人でした。
このあとで公演をやることを伝えたら、打ち合わせがあるので来れるかどうかわからないけれど、ということでいったん出ていかれましたが、公演がはじまってからもどってきて、後半を聴いてもらうことができました。
ほかに参加者は少なかったんですが、早川くんの知り合いの女性や、予期しない私の友人が来てくれたりして、ほぼ定刻の20時にスタート。
前半は「沈黙の朗読」のパートで、野々宮の朗読のみからスタート。
テキストは私の書いた「特殊相対性の女」の一部を使いました。
最初の部分の朗読オンリーのあと、私のピアノが参加して、あとはいつものようにセッション朗読。
沈黙の朗読の特徴として、時間がすすむにつれしだいに「沈黙」の部分が増えていきます。
最後は完全な沈黙に。
そして暗転。
エアコンのスイッチも止められ、静寂が。
といっても、ギャラリーの外からはわずかな街の音が漏れ聴こえてくるんですが。
ちょうど半分あたりで暗転になり、しばらく沈黙を味わってもらったあと、後半は「音楽瞑想」のパートへ。
真っ暗ななかで演奏者にも展開が予測できない即興演奏を深く聴き、自分の身体内にわき起こってくるイメージを、できるだけ言語思考を排除して感受します。
真っ暗なんですが、それでも人間の目は暗闇になれてくると、わずかな光でもとらえてうっすらとまわりが見えはじめます。
私が記録用にレコーダーを回していたんですが、そのLEDの光が意外な明るさを作ってしまったので、これは次回以降の課題になりました。
あと、全体の時間ももうすこし長くてもよかったかもしれません。
終わったらちょうど60分でした。
終わってからみなさんから大変好意的な感想を聴かせてもらい、「来月も絶対来ます」といってくれた人もいました。
そう、この「沈黙[朗読X音楽]瞑想」はリピートしてもらうことで、身体感受の深まりがあるだろうし、感覚体としての自分の感じもまた変化していくはずなのです。
みなさんからいただいた感想については、項をあらためて紹介します。
ちなみに、この「沈黙[朗読X音楽]瞑想」公演は毎月1回開催することが決まっていて、来月4月は17日(金)夜の予定です。
ご都合のつく方はぜひ参加してみてください。