2016年7月1日金曜日

うまくいっていることをしっかりお祝いする

(Photo by 吉房泰子さん)

私たち日本人は……って、一般化しちゃいかんな。
私はなにかものごとをおこなったとき、それがうまくいったりうまくいかなかったりしますが、そんなとき、ついついうまくいかなかったことばかり注目して、後悔したり反省したり、つぎはどうしたらうまくいくだろうかとくよくよしたりします。
習い性のようになっているんですが、自分に共感するという過程においては、なにかがうまくいかなかったときに、満たされなかったニーズを見てつながることも大切ですが、うまくいったときに満たされたニーズをお祝いすることももっと大切です。

最近の子どもは自己肯定感が少ない、などという論評がありますが、子どもにかぎらず大人も自己肯定感が少ない人が多いでしょう。
自己肯定感が少ないと、自分自身へのつながりが不安定になり、十分に能力を発揮することができません。
不安を感じることが多く、対人関係でもささいなことが気になって、ぎくしゃくしてしまいます。

自己肯定感を高めるために、他人や世間からの評価を得ようとする人がいますが、それは危険な方法です。
自分の存在について、他人軸での評価を基準におくと、評価が得られないときに非常に落ちこみますし、依存性が強まります。
自分の存在を肯定し、安定していきいきとすごすには、まずは自分自身を認めることが必要なのです。
そのために、満たされたニーズについてしっかりとお祝いする、という方法が有効になります。

この前の土曜日、私は「音楽瞑想ワークショップ」というものを代田区民センターでおこないました。
なかなか参加者が集まらず、すこし集まったかと思ったらどたんばに来て何人かキャンセルがつづいたりして、結局とても少人数でのワークショップとなりました。

会場がかなり広くて贅沢だったという反動もあって、その時点でやや意気消沈していたんですが、いざはじまってみると参加してくれたみなさんとのつながりや、自分がみなさんの役に立っているという実感、あるいはこれまで積みあげてきたものをしっかりとシェアし、表現できているという喜びもあって、たくさんのニーズが満たされました。

その翌日の日曜日には、下北沢の老舗ライブハウス〈レディージェーン〉で朗読の野々宮卯妙とふたりでライブをおこないました。
こちらもまた観客がすくなく、直前までひとりも来てくれないんじゃないかと気をもんでいたんですが、何人か思いがけない人が駆けつけてくれて大変ありがたかったのです。
そしてオーナーの大木さんが、集客のことにはひとことも触れることなく、私たちのパフォーマンスをおもしろがってくれたのも、うれしかったのです。
実際にたしかに、私たちがこれまで追求し、積み上げ、成長してきたことの最高の表現が、やけに軽々と楽しみながらやれたという手応えがあって、大きな達成感に包まれたのでした。

これらのことをしっかりとお祝いしておきたいのです。
自分ができたこと、うまくいったこと、満たされたニーズについて十分にお祝いしておくことで、いきいきとつぎに向かえます。

ところで、お祝いの方法は人それぞれですが、数日前、おもしろい方法を思いつきました。
NVC(共感的コミュニケーション)の創始者であるマーシャル・ローゼンバーグは、一日の終わりにろうそくを並べてお祝いをしていたそうです。
さながら、祭壇におまいりするような光景だったかもしれません。
その話をしてくれたトレーナーのホルヘ・ルビオは、日本の緑茶をゆっくりと時間をかけていれる習慣を持っていました。
これもきっと自分につながるための時間だったんでしょう。

私の場合、いつもやりたいと思っていてなかなかできずにいる最近の楽しみに、編み物があります。
時間がないからやれない、道具をいちいち引っ張り出してくるのが面倒、などと感じてついおっくうなんですが、編み物道具をひとつのカバンにいれておいて、なにかお祝いしたいときにそれを出してきて開き、マーシャルがろうそくを立てて儀式をとりおこなったかのように、編み物に取りかかってみる、ということを思いついたのです。
これはなかなか心楽しい時間です。
まさにお祝いと自分自身につながるための時間になると思います。

人それぞれ、方法があるかと思いますが、うまくいったことや満たされたニーズをお祝いし、ゆっくりと自分につながる時間を持つことは、いそがしい日常であるからこそ必要なことかもしれません。

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