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大きな川と雪のものがたり 第42回
ぼくが大人になってから船の操縦免許を取ったのは、その体験があったからかもしれない。
「その体験」というのは、小学三年のときにカミくんの船にとうとう乗せてもらったことだ。船というより、家といったほうがいいかもしれないけれど、それはたしかに川に浮かんでいて、ちゃんと動きもする船だったからだ。
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私が持っているのは、小型船舶の免許で、その免許のなかでは最高の一級という種類だ。それには「特殊」という免許資格区分もふくまれている。そして「特定」という資格も付与されている。
特定というのは、自動車免許でいえば「二種」にあたるもので、ようするにお客さんを乗せられる、というものだ。
この免許を持っているのは、私にはちょっとした自慢だ。もっとも、これを使う機会はめったにないけれど。
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自動車免許はそれより早く、学生になってすぐに取った。夏休みを利用して、故郷《くに》の街はずれにある教習所で取ったのだ。
そうそう、教習所は、ぼくらが豚小屋をこえてトンネルのほうまで探検した、ツネちゃんが怪我をしたあたりのちょうど川の反対側の、大きな車道《くるまみち》の脇にあった。
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それは三年の夏休みのことだった。
夏休みは終わりかけていて、ぼくはまだ残っている宿題と、まだ遊びたりない気分で、ちょっとせかされるように毎日を送っていた。もちろん宿題より遊びのほうが優先で、宿題はたくさん残っていたけれど、遊ぶことがたくさんあって、宿題なんかやってられないという感じだった。
本もたくさん読みたかったし、虫をつかまえに行きたかったし、水槽や虫かごの観察はいそがしかったし、みんなと鬼ごっこやかくれんぼや山遊びをしたかったし、そうそう、最高に楽しかったのは川遊びだった。
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学校にプールが作られるという計画があって、子どもが川で泳ぐのは基本的に禁止されていた。でも、学校のプールはまだ完成していなかったし、川で泳ぐ子はほかにもたくさんいたので、大人たちも黙認していたのだ。というより、子どもが遊んでも危なくないように、川の浅瀬に石をならべ、安全に泳いだりめだかをつかまえたり遊べるようにしてくれていた。そしてだれかがかならずそのあたりで見張っていた。
実際、そのころは、川や用水路に流されて溺れる子どもがいて、何年かに一度はどこかの子どもが亡くなったりした。大人たちが長い竹竿を持ってため池をさらっている姿が、古い記憶の底のほうにぼんやりと残っている。