2013年6月21日金曜日

初めて韓氏意拳に触れる

韓氏意拳という武術があることは知っていた。
人が「気」で吹っ飛ぶとか、タレントがそれを体験した映像がYouTubeにあったりして、催眠術まがいの眉唾ものだと断定している人も多い。
私はオカルトや(悪い意味の)スピリチュアル系がとても苦手で、友人の徳久ウイリアムくんからの情報がなかったらまったく興味を持てなかっただろう。

ヴォイスパフォーマーの徳久くんが韓氏意拳にはまっているという話は、本人から直接聞いていた。
本も見せてもらった。
難解な哲学書みたいで、内容はさっぱり理解できなかった。
しかし、韓氏意拳という言葉は武術家の甲野善紀氏や内田樹氏のツイートにしばしば出現していて、気になっていた。

その教練講習会が中野で開催されているというので、参加してみることにした。
場所は新井区民センター。
講師は内田秀樹氏。

参加者は定員いっぱいの8名。
年齢や性別はまちまち。
私よりご高齢の方もいらっしゃった。

内田先生はごくごくきさくな、そしてたいそう若い、はつらつとした方で、意拳というものに対する勝手な先入観を持っていた私は「老師」という感じからはとてもかけ離れた印象に、一瞬「大丈夫か」と思ったことを正直に告白しておく。

そして講習はさらっとなにげなく始まった。
武術の講習会によくある「なにかよくわからない神様へのお祈り」とか準備運動とか、一切なし。
私はこれまでいくつかの武術を体験してきたが、空手にしてもなんにしても、まずは「礼」とか「武術の神様への礼拝」とか「呼吸法」とか、なんらかの準備儀式的なものから始まるものがほとんどで、そこがちょっと嫌だった。
今回はそんなものは一切なし。

ちなみに、講習を受けているときにふと疑問に思ったことを質問してみた。
それは、「呼吸はどうすればいいのか」ということだ。
自然にやればいい、という明確な答えだった。
こういう動きのときはこういう呼吸法、と決めてしまうとそれは型になってしまい、意拳の方法と反してしまう。
意拳はあくまで、型というより自分自身の身体との対話、思考を捨てたマインドフルネスにおける身体運用の高度な技術をめざす。
というのは、私のみじかい体験からの解釈だ。
まちがっているかもしれないので、引き続き何度か受けてみたいと思った。

教練の方法を教えてもらっただけなので、実践まではとても行かなかったが、時々かいま見ることができた内田先生の武術的な鋭くパワフルな動きは充分に魅力的なものであり、なおかつ私が知るほかの武道のどれとも違った奥深いものだと感じた。
催眠術だと断定している人がいたが、それは違うと思う。
韓氏意拳の有効性は、身体運用技術が物理的に合理的なものであり、人が吹っ飛んだりする現象も科学的に分析・説明できるものだろう。

そして語彙がすごかった。
身体運用についてのさまざまな語彙表現は、私にはまだ理解できないものがほとんどだったが、身体を使って実際にやってみせながら聞くうちに、たぶん理解できるようになっていくのではないか。
武術の方法を教えるのに「おおらかな身体つき」とか、「身体の様子を感じる」とか、非常に興味深い表現が次々と出てきて、おもしろかった。

この技術を私はもう少し身につけ、マインドフルネスと身体運用の技術として現代朗読にも応用できないかと、ちょっと欲を持ってしまっている。
韓氏意拳を参考にしながら、現代朗読における身体運用の意識をさらに緻密に高めるためのエチュードを作ることができそうだ。
先生からはしかられるかもしれないが、明日から始まる「朗読はライブだ!」ワークショップでも生かしてみたい。
ライブワークショップに興味ある方はこちらからどうぞ。