二十代のなかごろからラジオ番組の制作にたずさわって、以来ずっと音声表現に関わりつづけてきた。
その過程で、ナレーションや朗読のことを検証したり実践したりしながら、朗読演出という立ち位置を確立しつつ、現代朗読という方法論をまとめあげてきた。と同時に、オーディオブックの収録や共感的コミュニケーション、話し方講座、ミュージック・メディテーションなどを通じて、人の声と音声表現についてさまざまな角度から検証を重ねてきた。
私のなかに集積されたこれらのノウハウをひとことで説明するのは難しいと思っていたのだが、最近、うまい表現を思いついた。それが表題の「ボイスコーチング」である。
コーチングという手法が確立されているが、それを声にもあてはめることができるのではないか。
自分の声に自身がない、話をしても人から聞き返されることが多い、自分の声が嫌い、大勢の前で話をしても聞いてもらえないことが多い、話をするときあがってしまう、声が小さい、などなど、自分の声に悩みを持つ人が多くいる。そのことがコミュニケーションを阻害したり、自分を表現することの邪魔をしたりしていることが多い。
また、声の仕事をしている人でも、より表現力をアップしたい、オリジナリティを持ちたい、クオリティをさらに上げたい、といったニーズがある人がいる。
そういった人々に対して、私がこれまで獲得してきた経験を生かせるコーチング技術が有効なのではないかと思った。
それらを「ボイスコーチング」という考え方に収束できないかと思っている。
音読療法が心身ケアに有効な方法論の集大成だとしたら、ボイスコーチングは音声表現の方法論の集大成にできるかもしれない。