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2019年1月22日火曜日

私の音楽歴——いかにして即興ピアニストになったか(20)

朗読と即興ピアノのパフォーマンスをすぐにまたやることになった。
次はもうすこし大きな会場でやろうということになり、福井の〈みゆき座〉という映画館の地下にあったディスコを借りた。
そしてゲストも呼ぶことになった。

ゲスト共演するのは水上勉の小説で有名になった越前竹人形。
浄瑠璃人形のような人形で、若手の使い手がからむ。
会場には舞台装置のような飾りと照明が演出された。
私の実家にあった古い蚊帳を吊りこんだりして、かなり大がかりなイベントとなった。

使ったテキストは寺山修司のもの。
大勢の人が詰めかけた。
榊原が自在に動きながら読み、私が即興でピアノを弾き、越前竹人形が怪しげな雰囲気をかもしだした。
かなりおもしろいパフォーマンスだったと思う。
私もおおいに楽しんだ。

そんななか、私たちの活動に興味を示した榊原の知り合いの名古屋の女性が、みずからプロデュースを買って出てくれて、名古屋と岐阜で公演を打つことになった。
共演者に岐阜のフルート奏者の男性と、舞台装置に奈良の造形作家の大がかりな木彫を運びこんだりした。

名古屋では電気文化会館、岐阜では御浪町ホールでやることが決まり、ポスターやチラシも作られた。
前宣伝として中日新聞や岐阜放送などのラジオ局にも出た。

この公演は大成功で、客入りもかなりあった。

朗読者としての榊原忠美との付き合いは、このあとも長くつづいて、現在にいたっている。
私がもっとも信頼して、どんな突拍子もないアイディアでも本番中にぶつけることができる共演者のひとりだ。

榊原忠美は現在も、名古屋では売れっ子のナレーターであり、クセックACT名古屋の看板俳優であると同時に、300回を軽く越える「木を植えた人」の連続朗読公演をおこなっている朗読家である。
私が現在、即興ピアニストとして活動をつづけているその礎の重要なパートをになった人として、大切な存在と思っている。

ところで、FMラジオの仕事はその後もつづいていたが、その年の夏に思いがけない出来事が起こって、私の人生は大きく別の方向に舵を切っていくことになった。