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2017年3月22日水曜日

影響を「受ける」より「与える」

韓氏意拳という武術では「自分に徹《てっ》する」ということを強く心がけます。
相手をどうこうしようというより、自分に徹する、自分の能力やエネルギーを最大限に活《い》かすことに徹し、相手をどうこうしようと企《たくら》まない。
そうすれば「結果的に」相手に最大限のダメージを与えることになる、というのです。
確かにそのとおりで、しかしこれはやってみればわかりますが、やれそうでなかなかできることではありません。

我々は相手がそこにいると、つい「どうにかしよう」としてしまいます。
これは武術に限ったことではなく、表現行為や人間関係でもそうです。

誰かに対して、こうしてやろう、こうしてもらいたい、役に立ちたい、こらしめたい、喜ばせたい、思いどおりにしたい、などという企みがあると、それは力《りき》みとなって自分の全体性を損《そこ》ないます。
つまり、自分の最高のパフォーマンスを発揮できないのです。

自分が最高のパフォーマンスを発揮するには、まったく力みのない、ちょうどいい全体性が行き渡っている必要があります。
しかし我々の残念な癖として、つい「やっている実感」を追い求めて、力んでしまうというものがあります。
私は武術の稽古を通してそれをいやというほど学びました。

相手をどうこうしようとするのではなく、まずは自分に徹し、自分のイキイキさやニーズにつながり、それに向かって自分がちょうどよく発揮されるのを、自分自身が妨《さまた》げないこと。
これが必要で、また有効なんですが、本当に難しいのです。
我々は企みのかたまりなんです。

問題は、我々は自分に徹する前に、外側から影響を受けすぎるということなんです。
自分に気に入らないことがあればイライラする。
そんなことをしてもなんにもならないのに。

怒っている人がいたら、オロオロとどうにかしようとする。
攻撃してくる人がいたら、それをさらに上回って強力にダメージを与えようとする。
だれかの役にたとうとしすぎる。

外側に向けた目を、自分自身に向けなおし、本当に自分に徹して自分本来の能力を発揮しつくすことができたら、それは結果的に相手やまわりに対して最大限の影響を与えることになります。
武術でも、自分に徹し、ただ自分のことをおこなっているだけのことが、結果的に相手に大きなダメージをあたえ、勝負を制することになるのです。

相手やまわりから影響を受けるのではなく、ただそれをそこに「ある」と受け取りつつ、自分のやれること、自分の能力を最高に発揮することに徹しつづける。
自分を最大限に生かしきりたい、自分の人生をまっとうしたい、という命のニーズにもつながっているかもしれません。

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