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2016年8月20日土曜日

感情やニーズは自然生命現象であり、コントールできない

共感的コミュニケーション(NVC)を身につけたいと思っている人のなかで、
「感情をコントロールできるようになりたい」
という方がときどきいらっしゃいます。

ちょっとしたことでイライラしたり、怒りにかられて暴力的な言動をとってしまったり、悲しみにとらわれてなにもできなくなったり。
強すぎる感情は、ときに人を振りまわします。
そんな感情をコントロールして、いつも冷静にいられたり、どのようなことにも落ち着いて対処できたらいいのに、と思うのは当然のことでしょう。

しかし、残念ながら、感情はコントロールできません。
感情はただそこに生まれ、存在します。
そのこと自体をコントロールすることはできません。
つまり、心臓の動きや体温をコントロールできないように、感情が生まれるのをコントロールすることはできないのです。
感情は自然に発生する人の生命現象のひとつです。

一見、感情をコントロールできているように見える人がいます。
本当は怒りが逆巻いているのに表面的には冷静をたもっている人、本当は悲しかったり寂しくてしかたがないのになにごともないように明るくふるまっている人、本当は調子が悪くやる気も出ないのに元気なふりをしている人。
これらは「コントロール」ではなく、別のふるまいです。

感情を無視する、ごまかす、やりすごす、抑えこむ、ねじ曲げる、こういったふるまいによって、一見コントロールしているように見えることがあります。
いずれも自分の自然な生命現象を力づくで変質させようとする、いわば自分のたいする暴力的なふるまいです。
本当は疲れきって休まなければならないのに、無理に栄養剤や点滴を打って身体にムチ打つようなものです。

感情を不自然に扱うことで、人はしだいに鈍感になります。
自分の本当の感情がどのようなものなのか、いまなにを必要としているのか、わからなくなってしまいます。
感情は共感的コミュニケーションでいうところの「ニーズ」をさししめすポインターの役割をはたしていますが、それが機能しなくなります。
感情はただあるがまま受けとり、丁寧にあつかう必要があるのです。
さらにいえば、感情をあるがままに繊細に受けとり、目をそらすことなく丁寧に見る目をやしなう必要があります。

感情はコントロールするのではなく、まずは繊細に見る必要があります。
自分の感情にたいして客観的に見ることができるようになれば、その感情が起こったとき自分はどのようにふるまってしまうのか、その感情は自分のどのようなニーズを教えてくれるのか、だんだんわかるようになります。
そうすれば、感情に振りまわされることなく、自分を客観視し、そして自分に必要な行動を選択できるようになります。
このプロセスを練習することが共感的コミュニケーションの練習にほかなりません。

自分という人間の生命現象――生きて呼吸していること、心臓が鼓動していること、体温が保たれていること、消化吸収がおこなわれ体力が回復すること、危険を察知し回避する行動が生まれること、自分に必要なことを自分自身が教えてくれること、そして豊かな感情がその身体に生まれること、こういったことにたいし謙虚になり、尊重をあたえ、丁寧に繊細にあつかう方法を身につけていきたいのです。

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