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2016年3月17日木曜日

ここに至っていることに気づいて感謝しかない

ジブリの映画監督・宮崎駿を取材した「創作の秘密」というNHKスペシャル番組で、宮崎駿のアトリエが出てきた。
小金井の緑が多い住宅街のなかにたたずむ木造の建物。
一階はちょっとしたホールのようになっていて、ミーティングやパーティーができそう。
グランドピアノもある(いいなあ)。
ちょっとしたキッチンとカウンターがあり、番組では宮崎駿がそこでコーヒーを飲んだり食事する風景が出てくる。

二階は彼の仕事場とプライベートスペースになっているらしい。
書斎のようなところにこもって、ひとりで漫画を描いたり、ストーリーボードを描いたりしていたが、映画製作がはじまるとそこに動画監督と美術監督の机も持ちこまれ、3人で仕事していた。
二階の奥には寝室があるらしく、昼寝のためにそちらに消えていったりもしていた。

仕事する環境として理想的で、うらやましいなあ、私もこういう環境で仕事したいなあ、と思っていた。
具体的には、ものを書いたり音楽や映像を作るのは孤独な作業で、ひとりなれるスペースが必要だが、同時に仲間と交流する場所もほしい。
アーティストや製作者は、その活動を支えてくれる仲間やコミュニティが必要だというのが、私のかんがえだ。

孤高の表現者というのは、いまの時代、非現実的なのだ。
これについてはあらためて書きたいが、アーティスト・製作者はコミュニティとつながり、支えてもらったり、あるいは逆に伝えていったり、体験や学びの場をともに作りあげていくことも、大切な仕事だとかんがえている。
振り返ると、私はそれをめざしてやってきたようにも思える。

なんてことを思いだしていたら、ふと、いま現在の私の環境って、すでにそれが実現されているではないか! ということに思いいたった。

私の現在の活動拠点は羽根木の家という、定期借家ではあるけれど緑にかこまれ、野鳥がたくさんおとずれる古民家である。
ここにはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)・共感的コミュニケーションの仲間や、現代朗読協会のメンバー、音読療法協会のメンバー、ほかにもトランジションやみつばち部の仲間もひんぱんに集う。
いずれも私にとってとても大切なコミュニティだ。

キッチンもあって、みんなでここで料理をしたり、お茶を飲んだりできる。
また、座敷や庭ではちょっとしたワークショップや勉強会、ゼミを開催することもできる。

同時に私にはひとりになれるスペースが必要なのだが、羽根木の家の二階には仕事場がある。
ここでは孤独に、自由に、好きなように仕事に集中できる。
まさに宮崎駿のアトリエのような環境が実現しているではないか(グランドピアノはないけれど)。

私がいまもっとも幸せを感じるのは、自分がテキストを書き、仲間にそれを読んでもらい、そのライブの現場に私も音楽演奏で立ちあうこと。
自分が書いたテキストというただの記号が、人の声によって実体化し、即興のライブコミュニケーションによって立体化する。
それをその場に参加してくれた人たちに受け取ってもらえる。
私にとってこれほど豊かな場は、ほかに想像できない。

私はなんてめぐまれた人間なんだ!
あらためていまこの状況にたどりついていることに感謝の気持ちがわいてくる。
この状況にたどりつくまでには、もちろん私ひとりの力でできるはずもなく、多くの人の協力や尽力があったし、いまもそれはつづいている。

これまで「ないもの」ばかりを追いもとめ、不満をもらしつづけてきたが、これからは「あるもの」により注目し、それを生かしていきたい。
たしかにいまだに経済的にはとても苦しいし、好きな旅行に行く時間もかぎられている。
パスポートはついに10年の期限が切れてしまった。
しかし、「あるもの」はより豊かにここにあるではないか。
かわいい猫もいる。

この感謝を表現として伝えるには、私は自分の仕事にもっと集中し、さらによいものを作りだしていきたいと思う。

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