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2016年3月15日火曜日

喫茶茶会記でのイベント「5years」に出演してきた

2016年3月12日、土曜日。
四谷三丁目の〈喫茶 茶会記〉でおこなわれたイベント「5years」に、
現代朗読の野々宮卯妙とともに出演してきた。

このイベントは役者でダンサーの金野泰史くんたちが主催で、私は彼から誘われて、喜んで参加することにした。
朗読と組んでいいかと尋ねたら、快く歓迎してくれたので、野々宮といっしょに出ることになった。

金野くんは私の共感カフェに何度か来てくれていて、最初に会ったときはえらいイケメンの人が来たな、と強く印象に残った。
イケメンなだけでなく、ユーモアもあり、また私と共通の関心事も多く(とくに身体表現について)、この縁は大事にしたいなと思っていた。
なので、彼のほうからイベントに誘ってくれたのはありがたかった。

私と野々宮は前日の3月11日に明大前で「沈黙[朗読X音楽]瞑想」を終えたばかりだった。
が、演目は別のものをやることにした。
沈黙の朗読の演目は、あたえられた25分という時間には長すぎたので、311を題材に含む「繭世界」というテキスト(http://mizro.blogspot.jp/2011/05/blog-post_31.html)を使うことになった。

「5years」は午後16時半すぎにはじまった。
開けてみるとお客さんがいっぱいで、客席はぎゅう詰めだ。
私と野々宮は自分の出番前に客席を来客にゆずるために控え室に移動して、最初のグループの3番目のダンス・パフォーマンスを見ることができなかったくらいだ。

演目が押し押しで、予定されていたグループごとのアフタートークの時間は取れず、私たちは最初のグループのすぐ後にやることになった。

茶会記のピアノはアップライトで、本番まで一度も触っていなかったので、「やりましょう」という時間になって初めて、ピアノを触った。
調律のあんばいを調べるふりをして、そのまま演奏にはいる。
つなぎのBGMとしてなにかロック音楽がかかっていたのにかぶせて、演奏をはじめる。
この、お客さんをだまし討ちにする感じが、私にはけっこう楽しい。
音響担当の人も気付かなかったのか、なかなかBGMが落ちなかったが、そのうちBGMが消え、そのままパフォーマンスへと突入。

BGMを引っ張った私のピアノ演奏の、ちょっとゆるんだ隙をねらって、野々宮がすかさず「繭世界」のテキストではいってきた。
いきなりトップスピードだ。
昨日、明大前で濃密な公演を2回、いっしょにやっているので、その延長をやっているような気もする。

ところで「繭世界」というテキスト(http://mizro.blogspot.jp/2011/05/blog-post_31.html)は、ふたりで朗読するように書かれているものだ。
見ればわかるが、上下二段(左右二段)にテキストがそれぞれ書いてある。
野々宮がひとりで読むときは、それらの行をつなげて書かれたとおりに順に読んでいくので、聴いているほうはふたつのストーリーが分断されてなにがなんだかわからなくなってしまう。
それがまたおもしろい効果を生む。

聴いてくれている人たちがものすごい集中を向けてくるのを感じながら、私も存分に「いまここ」を味わいながら即興演奏と野々宮とのやりとりを楽しませてもらった。
昨日につづいて幸せな時間だったが、昨日同様、それが特別な時間というわけでもなく、ただ起きるべきことが起こっているという安定感のなかにいつづけることができた。

それはそれとして、私がこのイベントでもっとも感銘を受けたのは、主催者の金野くんとそのお仲間のパフォーマンスだった。

日下部泰生という人のペインティング・パフォーマンス。
身体性がすばらしく、舞踏のような動きで壁面に抽象的なイメージを描いていく。
水で濡らすと黒く変色する特殊な紙を使っていたようで、乾かすと白くもどる。
最後の、ドライヤーを使ったり、自然に乾いて白くもどっていくイメージがとても美しくて、涙が出そうになるほどだった。

そのあと定方まことという人の朗読と金野くんのダンスパフォーマンスがあったのだが、これが心打たれた。
辺見庸の震災詩を読む定方さんの、飾らない、真摯で正直で、エネルギーのこもった感じと、金野くんの全身全霊を使った動き。

あとで気づいたのだが、金野くんといっしょにやっている人たちは、みんなイケメンで、すばらしく肉体派で、ただそこにいるだけで優越性があるような男たちだ。
しかし、そんなことをひけらかさず、まじめで、正直で、控えめで、しかしパワフルで、とても魅力的だ。
これから間違いなく活躍していく人たちだろうと思う。

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