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2009年9月18日金曜日

夜と森のミュンヒハウゼン

 石村みかさんからご案内をいただいたので、三鷹の芸術文化センターまでサスペンデッズの公演「夜と森のミュンヒハウゼン」を観に行ってきた。
「星のホール」という小ホールなのだが、天井が高く、おもしろい空間だ。そこを贅沢に使った舞台設定をしてある。舞台設定というより、インスタレーションのようだ。森を思わせるオブジェが林立した中を、客は歩いて席につく。
 客席は80席ばかり。「舞台」という意味での役者が動くスペースは、客席のゆうに5倍はある。とてもいい。
 私はストレートプレイがかなり苦手なのだが、つまり、意味とかストーリーを追うことを前提に作られている演劇はほとんど拒否反応を示す人間なのだが、この作品はかなりよかった。さまざまなシンボル的なエピソード、キャストが、ファンタジックにからまりあうかと思えば、リアルで生々しい現実的なストーリーとリンクしていたりする。
 全体的に世界観はそう大きくないし、観ている者の価値観を揺さぶるようなメッセージ性もないが、役者たちのうまさとよく考えられた進行が、100分近いステージを飽きさせることがなかった。
 リアリティとファンタジー、ストーリー性と非ストーリー性のバランスが巧妙で、たぶんこの演出家(早船聡)はバランス感覚にすぐれている。おそらく今後、ある程度売れていく人だろうと思う。

 私が一番楽しめたのは、石村みかさんの演技だった。
 ほんのわずかの身体の構え、姿勢、微細な動きによって、空気が変わり、言葉の質感が変化していく。見事な身体性だ。
 それにしても、結局は「見せ物」にしか終わっていなかった演劇という表現の限界をも、強く感じた。
 その点、音楽は違う。そして朗読も違う。音楽も朗読も、そこに観客がいて、うまくすればコミュニケーションがある。