いろいろないきさつはあったんですが、そこはごっそりはぶくことにします。
金沢と東京に本社がある三谷産業株式会社の執行取締役・松嶋さんから、「支援するから被災地でボランティア活動をやりませんか」という話が来たのは夏の初めのことでした。もちろんふたつ返事で「やります!」と答えました。
その後、支援ボランティア活動のための助成金があるというので、申請してみました。何人行くかによって費用も変わりますが、交通費と宿泊費はかなりかかります。仮にげろきょ(現代朗読協会)メンバーが5人で行くとなると、往復の交通費だけで15万以上。飲食代は各自がなんとかするにしても、宿泊費もかかりますし、その他の経費もあります。助成金がおりれば助かると思ったのです。
が、結果的に助成金は認められませんでした。「より緊急性の高いものから」という理由で、私たちの活動にはおりなかったのです。
これは被災地ツアーは中止かな、とあきらめかけていたところ、なんと三谷産業から「交通費と宿泊費も持ちますよ」という話が来たのです。これにはびっくり。
じつは三谷産業は東日本大震災直後からすぐに動きはじめていて、これまで何度か現地に物資を運んで支給したり、活発に支援活動を展開しているのです。が、被災地の人といっしょになにかやるような交流型のイベントはまだやったことがありませんでした。
現代朗読協会で協力できることがあるというのは、私たちにとってもうれしいことでした。
私たちになにがやれるか考えてみました。
げろきょは発足以来、学校や養護施設、老人ホームなどで公演やワークショップをやってきました。また、震災以後は「音読ケア」という心身ケアワークをやっています。これらの経験からプログラムを用意することにしました。
小中学校でおこなってきた宮澤賢治作品をコラージュした朗読プログラム「Kenji」や、新美南吉の「一年生たちとひよめ」、そして音読ケアのワークをいくつか。
一緒に行ってくれる人を募集したところ、ゼミ生から野々宮卯妙、照井数男、唐ひづる、山田みぞれの4人が、そして私といっしょにOeufs(うふ)というユニットで音楽活動をやっている歌手の伊藤さやかが、計6人で行くことになりました。伊藤さやかが加わったことで、歌もいっしょに歌えるねということになりました。
2011年9月25日、日曜日。
午前5時に羽根木の家を出発、ということで、三谷産業の松嶋さんと都平(とひら)さんがレントした10人乗りのワゴン車で来てくれました。
松嶋さんは前日に金沢から東京入りして、都平さんといっしょに早朝から来てくれたのです。
羽根木の家では私と野々宮と唐の3人が乗りこんで、5人で北戸田駅に向かいました。北戸田駅で埼玉組と合流することになっていたからです。山田みぞれは埼玉ではなく江戸川区ですが。
夜明けの空が美しく、天気は幸い、よさそうです。
北戸田駅には予定より20分ほど早く、6時40分に到着しました。
(つづく)