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2020年1月10日金曜日

いまここにいるということ「身体・表現・現象」(末期ガンをサーフする2(23))

年末に受けた骨シンチグラムの検査結果を聞きに、病院に行ってきた。
骨には転移していなかった。
まずはよかった。
すると、しつこく長引いている腰痛の原因は、あらためてなんだろうということになる。
こちらは依然として不明。

腰痛に加えて下腹部に尿意に似た疼痛がある。
排尿しても消えないので、膀胱炎のようなものではなさそうだ。
が、腰痛と同様、痛み止め薬を飲むと消える。
こちらも原因不明。
もうすこし経過を観察することにする。

いずれにしても抗ガン剤も放射線照射も治療はおこなわないということを医師に告げ、確認しておく。
病巣は確実に進行していくので、今後なにか病状に変化があれば、その時点であらためて相談するということで。

とりあえず、訪問看護とホスピスをいくつか、つながりを作っておくことにした。
そのための紹介状やデータ、治療指示書は担当医が書いてくれるとのこと。

■ネット配信、パソコンからケータイへ

まぐまぐというメールマガジン配信サービスを使って、私は無料の自作エンタテインメント小説やエッセイ、執筆日記のようなものの配信をスタートさせた。
まぐまぐはまだスタートしたばかりで、メルマガもまだ多くはなかった。
そのおかげで、配信がスタートすると私のメルマガは多くの人が配信登録してくれて、すぐに数百人から千人以上の読者数へと増えていった。

読者からのリアクションも直接私に届いた。
活字出版でも読者からの手紙が届くことがあったが、あくまで出版社経由であり、数もすくなかった。
メルマガ読者の場合は、メールマガジンを読んですぐに読者は作者に直接メールを送ることができたので、非常に敷居が低かった。

毎日とどく読者からのメールのなかから、めぼしいものを選んで、私はそれに返事を書いた。
直接メール返信するのではなく、メールマガジン上に「読者からのお手紙」として公開返信を掲載したのだ。
するとそれを見て、公開されることを前提に「ファンレター」を送ってくれる人が急増した。

メールマガジンの読者コーナーは、私と読者との交流の場となり、本編の小説より人気が出るほどになった。

そうやって読者との直接の交流をつづけるうちに、気づいたことがある。
メルマガに直接メールを送ってきてくれるファンのほとんどが女性であり、また小説の読者としてはかなり若い層であることだった。
またその多くが、携帯電話でメルマガを読み、携帯電話から直接メール返信してくるということだった。

そのころ、携帯電話が爆発的に普及しはじめていて、いまでこそあたりまえになっているが、ひとり一台の電話を持つ時代になりかけていた。
i-modeというネットワークサービスをDoCoMoがはじめ、他社も似たようなサービスで追随していた。
携帯電話ユーザーの若い層は、ケータイで文章を読んだり、メールを書いたり、音楽を聴いたり、ゲームをしたり、ということがごくあたりまえになりつつあった。
世の趨勢はパソコンからケータイへとなだれを打って変わっていたのだ。

そんなとき、東京のある会社の社長から直接私に一通のメールがとどいた。
そのメールが私の人生の後半を大きく変えることになった。