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2016年6月26日日曜日

音読療法で親とつながりを作る

みなさんのなかで、離れて暮らすご両親やひとり暮らしの母親、父親のことが心配な方はいませんか?
自分の親が、運動不足で身体がおとろえたり、コミュニケーション不足でふさぎがちになったり認知症が進んだり、楽しみがすくなくて鬱々としていたり、といったことが心配ではありませんか?
要介護になったり、施設に入居の必要が出てくることを心配してはいませんか?

そんなとき、音読療法でできることがあります。
興味がありますか?

じつは上に書いたようなことは、まったく私自身と私の母にあてはまることなのです。
音読療法の前に、共感的コミュニケーションを知っていて本当によかった、と思うことが、去年から今年にかけてありました。
それは車の運転のことです。

母はもう80歳を超えているんですが、自由でいたい、まだまだ自立してがんばりたいという気持ちがあって、公共交通機関のとぼしい田舎暮らしでは車の運転が欠かせません。
しかし、家族としては年老いた母がいまだに運転していることがとても心配です。
ニュースで高齢者がブレーキとアクセルを踏みまちがえて重大事故を起こした、というようなことを聞くと、自分の母はだいじょうぶだろうかと心配になります。

母は戦前生まれですが、ようやく戦争が終わり、日本が発展していくなかでせっかくここまで平和に生きてきたのに、晩節で事故を起こしたり、ましてや他人を傷つけたり殺したりするようなことがあってはなりません。
それが心配なところへ、ちょっとした自損事故を起こしたのです。
怪我こそなかったものの、心配は最大限にふくれあがりました。

ここでたいていの人がやってしまうのは、きつく「もう運転はやめて」となかば命令したり、強制的に車を取りあげたり、運転免許を返上させたり、といったことです。
私はそれをやりたくなかったので、共感的コミュニケーションを思いだしながら辛抱強く母がなにを大切にしているのか、聞きつづけました。

結果的に母は、自分も安全や平和を大切にしていることに気づいてそれにつながり、いまではほとんど車を運転しませんし、遠くに行くときには知人や私に運転をたのむようになっています。
つぎの更新では免許を返上することを、自分からいいだしています。
私は母に命じたり、強制することなく、あくまで彼女の自主性を尊重しながら、自分のニーズも満たすことができたのです。

そのようなつながれることがわかって、ほんとうにうれしく、また自信にもなったんですが、最近は運転の問題のほかに、べつのことも心配として浮上してきました。
それは母自信も自覚していることなんですが、急に物覚えが悪くなったり、身体のおとろえが進んできて、以前できたことがどんどんできなくなってきている、ということです。
私が見ていてもその進行がすこし早すぎるように思いますし、またそのことで母がショックを受けているようすを見るのもつらいのです。
そこで私は、今度は音読療法をつかってあることをやってみようと思いつきました。

母が住んでいるのは、私が育った田舎の家ですから、ひとり住まいにはだだっ広すぎるくらいです。
10年前までは父がいましたが、亡くなってからは母はひとり暮らしです。
そんな家に母はひとりで住んでいて、体力が落ちてきたせいであまり外出することなく、物覚えも悪くなって人とコミュニケーションを取ることもおっくうになってきたのです。
それも急速に。
このままだと頭も身体もどんどんおとろえていくばかりであることは目に見えています。

音読療法が力を発揮する分野として「介護予防」というものがあります。
呼吸法、発声、音読エチュード、共感的コミュニケーションなどを用いて、心身のリフレッシュをはかり、コミュニケーションを活性化して、要介護者になることを予防するための運動ですが、音読療法はこの分野に力を発揮します。
もっとも特徴的なのは、「音読」という、たとえば文学作品を読みあわせたり、唱歌の歌詞を使ってエチュードをおこなったり、そしてそれをもとにコミュニケーションをおこなったりという、知的活動の一環としてそれをおこなえるということがあります。

私も自分が介護予防をしようとしたときに想像することですが、ただ身体を動かすだけのお遊戯みたいなワークには参加したくありませんし、お互いを批評しあうような非共感的な場にはいたくありません。
音読療法は知的活動であり、共感の場であることが、大きな特徴となっています。

その場に母に参加してもらえれば一番いいんですが、なかなか自分の親にそのことを提案しても受け入れられるのが難しいことがあります。
だから、そのときには、「場の提供」をお願いします。

だだっ広い家の、たとえば座敷や客間を提供してもらって、「ここを音読ワークに使わせてくれない?」とお願いします。
そして、チラシを渡して、「よかったら知り合いの人にこれを配って誘ってもらいたいんだけど」とお願いするのです。

最初はいやがるかもしれませんが、親はだれもが、自分の子どもの役に立ちたいと思っているものです。
協力してくれる可能性は高いと思います。

親は自分の子どもに協力して、それを喜んでもらえる。
こちらは人が出入りしたり、人とのコミュニケーションの機会が増えることで、親の刺激になる、ひょっとして音読ワークにも興味を持って参加してくれるようになるかもしれない。
お互いのニーズを満たすことができます。
そして日頃疎遠にしている後ろめたさもなくなり、親のほうもこちらとのつながりを感じてちょっとうれしい気持ちになるかもしれません。

親の家で音読ワークを呼びかけるための実際のチラシや、音読ワークにかんする資料を、音読療法協会では準備しています。
きっと多くの方に興味を持ってもらえるのではないかと確信しています。

ボイスセラピー講座(7.6)
7月6日(水)10:00-15:00は羽根木の家で音読療法協会のボイスセラピー講座です。呼吸、声、音読を使っただれにでもできるセラピーで、自分自身と回りの人を癒してください。