ページ

2012年10月11日木曜日

即興演奏法(1)

photo credit: rosipaw via photopin cc

音楽における即興演奏の方法論はいくつかあるが(たとえばジャズの即興理論)、私が30年近くかけて作りあげてきた「朗読という音声・身体表現者との共演としての即興演奏」についての方法は、おそらくあまり他にはないものと思う。
似たようなことをやっている人がいくらかはいるかもしれないが、方法論として系統立てて整理したものを、私は寡聞にして知らない。

学術論文のようなものはいくつか目にしたことはあるが、それはあくまで「分析」を目的としたものであって、一般的にその方法を共有・供与する目的で書かれたものではない。
この方法論を体系的に整理して、私以外の人に伝える方法はないものかということを、最近ずっと考えていた。
考えていく過程で、この方法論は朗読との共演だけでなく、即興演奏全般にあてはめることができるのではないか、と思うようになった。

私は幼少のころはクラシックピアノを習っていた。
あまりいい生徒とはいえず、個人教師について習っていたのも小学三年生から六年生までというごく短い期間だ。
中学生からはただ我流で好きな曲を弾いていた。
弾けもしないのにドビュッシーやムソルグスキーの難曲をやたらと叩きまくったり、高校生になるとジャズを我流で挑戦したりした。
この経験は意外にも、あとで役に立つことになったかもしれない。

いずれにしても北陸の田舎町だったので、ライブハウスもなく、音楽情報といえばもっぱらNHK-FMを聴くか、レコードを買ってくるくらいしかなかった。
子どもなのでそうたくさんレコードを買えるわけでもなかったし。

大学時代、京都に住むようになって、生まれて初めてライブハウスに行った。
目の前で繰り広げられるジャズの即興演奏には超興奮した。
そして自分もジャズミュージシャンをめざした。
しかし、これもあまりパッとしないまま挫折し、北陸の実家で細々とポピュラーピアノを教える仕事をはじめた。

27歳くらいのときに、地元のFMラジオ局で番組作りの仕事をするようになり、そのときに名古屋からタレントとして来ていた榊原忠美氏と、朗読とピアノ演奏によるパフォーマンスを始めたことが、ジャンルを超えた即興演奏の楽しさと可能性を私が知った最初のきっかけだった。
最初はフリージャズ演奏として朗読と即興的にセッションを重ねていたのだが、やがて音楽ジャンルは意識しなくなった。ときにクラシック的に、ときにポピュラー音楽的に、ときに現代音楽的に、さまざまな手法で即興をやるようになった。
以来、27年以上、私のように特別な機会をたくさん持って即興演奏活動をつづけている者は、ほかにはそういないと思う。
この方法論は、墓へ持っていくべきではない、次世代に伝えておきたいという思いがこのところ強まっている。

その方法の核となる考え方をいくつか整理しはじめている。
自分の考えを整理する最良の方法は「人に教える」ということだ。
最近、即興演奏とアレンジの個人レッスンを再開したし、「水城ゆう音楽塾」というグループ講義もスタートした。
私がいままとめ始めているドキュメントは、音楽をある程度知っている人ならそれを読めば私がやろうとしてきたこと、これからやっていけることがある程度類推できるのではないかと期待している。
また、この論は、その延長線上に、ディープリスニングなど演奏そのものの提供を目的とすることとは別に、「ヒーリング」「聴覚覚醒」「感受性リセット」などの目的・結果をめざす演奏行為にも応用できると考えている。

時間を見つけて少しずつ書いていくつもりなので、興味のある方はおつきあいいただければ幸いである。また、疑問点や誤謬などのご指摘は、いつでも歓迎である。即座にフィードバックしていけるのが、ネットにおける work の最大の利点である。