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2012年3月7日水曜日

「怒り」という感情の扱い方

photo credit: Diogo A. Figueira via photopin cc
 自分がなにげなくいったことで、相手が思いがけなく怒りだしてとまどった、という経験はないだろうか。 そんなとき、たいていの人は「自分のせいでこの人を怒らせてしまった」とかんがえて、その人の怒りをなんとかおさめようとして謝ったり、なにかしようとする。そのどちらもうまくいかないのは、どなたも経験していることだろう。

 まず「とりあえず謝っておく」という対処法。これがうまくいかないのはなぜだろう。
 とりあえず「ごめんごめん、自分が悪かった」という態度は、その裏側に「謝ったんだからもうこれ以上責めないでよ」というメッセージがあり、それが相手に伝わってしまう。つまり「謝ったんだからいいじゃない」という、それ以上のコミュニケーションを拒絶するメッセージだ。相手は拒絶されたことを無意識に感じながら、しかし謝られているという事実の前に立ちすくんでしまう。くすぶった思いを抱えたまま引き下がることになる。

 次に、自分のせいで相手を怒らせてしまったんだから、自分がなんとかすることで相手の怒りをおさまらせようという対処法。
 これには大きな落とし穴がある。というのは、相手は自分になんとかしてもらおうと思って怒ったのではない、という事実があるからだ。
 相手が怒ったのは、自分の発言が相手のニーズのなにかを損なったからだ。なにかをしてもらおうとして怒ったのではない。

 例をあげよう。
 互いにパートナーの男女がここにいる。恋人とか夫婦とか。
 男性が女性に、
「きみのその髪型、すてきだね」
 といったとする。とたんに女性が怒りだす。
 というような状況を想像できるだろうか。普通はありえない状況だと思うかもしれないが、実際にはありえることだ。しかし、男性側には女性が怒りだすなんてことは予測もつかなかった。実際には女性はこのように怒っている。
「三日も前にこの髪型にしたのに、いままで気づかなかったなんて!」
 そのとき、男性側が、
「ごめんごめん、気づかなくて悪かったね。謝るから許してよ」
 といったとして、女性の怒りはおさまるだろうか。
 こんなとき、どうすればいいのだろうか。

 女性がなぜ怒っているのか、その怒りという感情が指し示している「ニーズ」はなんなのか、そこに興味を向けることが有効になる。
 たとえば、
「きみが怒っているのは、ぼくがきみの髪型が変わったことに三日も気づかなくて、ぼくからないがしろにされていると感じたからなのかな?」
 と質問を向けてみる。彼女の反応はどうなるだろうか。
 彼女からしてみれば、まだ怒ってはいるけれど、男性が自分の感情とニーズに興味を向けてくれたことで、彼が自分に寄り添ってくるような印象を受けるだろう。だからそれに対して答えていける。つながりを拒絶するのではなく、つながろうとしてくる気持ちを受け取って、まだ怒りは収まっていないかもしれないけれどつながりつづけたまま話をすることができる。
 彼の質問によって彼女が自分のニーズに気づいたとき、そして彼とそのニーズを共有できたとき、ではどうすればそのニーズを一緒に満たすことができるか、という話に進んでいくことができる。また、彼はけっして彼女をないがしろにしようとして髪型の変化に気づかなかったわけではなく、ただたんに不注意だったにすぎないということがわかるかもしれない。だとしたら、今後はどうすればいいか、どのようにすれば彼女を大切にしているという彼の気持ちを伝えていくことができるか、という話もできる。

 このように、共感的コミュニケーションを使うことで相手のニーズに触れていくことで、ふたりは怒りをはさんだ対立関係ではなく、怒りの原因になったニーズを共有する共感関係に立つことになる。
 この方法は自分が怒りを感じたときも同様に使える。自己共感という方法を用いる。