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2011年4月13日水曜日

東京電力福島第一原発の現在の問題と今後どうなるのかについて

事故の評価レベルが7にあがったことで、今後どうなるんだろう、とか、なにか破局的なことが起きないのか、などと不安を覚えている人が多いようなので、簡潔にまとめておきたい。
あくまでも「簡潔に」なので、ざっくりしたまとめである。詳細についてはそれぞれ自分でしっかりと調べることが大切だ。

原発の現況。
放射性物質の観測値が落ち着いているので、その意味では状況は落ち着いているといえる。
それでも、放射性物質は出続けている。
周辺地域で観測されている線量は、炉心冷却のために注水されている格納容器の圧力をときおり逃がさなければならないので、そのときに放出される水蒸気やその他気体に混じって一緒に出てくる放射性物質のものだ。
これは現在の状態がつづくなら、いきなり爆発的に増えるようなことはないだろう。しかし、継続的に出つづけているので、蓄積が増大してくると健康被害に結びつきかねない。そのために政府は計画避難区域を設定したりしている。
現在の線量で50キロ圏外(東京は250キロ圏)に避難が必要な深刻な問題が出てくるとは思えない。

現況でもっとも問題なのは建屋地下や施設にたまった高濃度汚染水だろう。
今日、700リットルの水の移動をやっているといっているが、全体で2万リットルともいわれている。これをどこに移すのか。
しかし、これも海へあふれ出さないかぎり、いきなり事態が深刻に急変するということは考えにくい。そしてこの汚染は大気には出にくい。海洋と近隣の土壌汚染が問題だ。

いますぐに事態が劇的に急変するようなことはあるのか。
たとえば大きな余震や再度の津波によって、現在動いている冷却ポンプが動かなくなり、炉心を冷やせなくなる、といった事態が起こった場合、どうなるか。
すでにかなり破損していると思われる燃料棒がさらに破損し、ドロドロになったウラン燃料の塊が圧力容器から漏れてくる、ということはありうる。
また、水素爆発を起こして圧力容器もしくは格納容器が大きく破損する、という事態もありうる。
その場合は相当な量の放射性物質が環境に出てくることになるだろう。この事態はなんとしても避けたい。そのために必死に作業が続けられている。
そういう事態になった場合、30キロ圏内はもちろん、さらに広範囲な避難が必要になってくるだろう。これは事態の推移を注意深く見ているしかない。

この事態はいつ収束するのか。
原発事故を収束させるにはいくつか段階がある。
まずは炉心を安定的に冷却し、放射性物質を閉じこめること。
が、大量の汚染水が作業を阻んでいて、安定冷却が可能になるための本来の冷却系の復旧には、相当の困難と時間がかかると思われる。おそらく数ヶ月単位、ひょっとしたら年単位が必要だろう。つまり、現在のような状況がしばらく続くということだ。

安定的な冷却が成功し、放射性物質の閉じこめが完了したら、次は「廃炉」作業がある。
炉心から核燃料を抜きとり、汚染物質を完全に除去し、原発の施設そのものを解体してさら地にもどす。
これには10年以上かかるといわれている。数十年かかるという試算もある。

私たちはこういう事態の蓋をあけてしまった。ほかの原発のことも考えれば、今後ずっと、このパンドラの箱を抱えたまま生きていくことになる。
簡単に「原発を止める」といっても、廃炉のための難しい工程をこなしていくための多くのお金と技術者が必要だ。おそらく、廃炉技術者の育成も必要になるだろう。そういうこともすべて含めて、脱原発を考える必要がある。