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2010年7月16日金曜日

朗読の快楽/響き合う表現 Vol.15

とくに技術的なことを専門学校などで習ったこともない私でも、番組編集は簡単にできた。もちろん最初は機材やソフトの扱いでいろいろな苦労を重ねたが、ネットや書籍をあたって情報を集め、すべて独学で身につけた。「ジューシー・ジャズカーゴ」という名前の番組だった。

タイトルどおり、ジャズを流したり、うんちくを傾けたりする番組で、ジャズにあまり詳しくない高橋さんに私が解説する、というスタイルだった。55分番組だったので、新譜を紹介したり、古い定番曲を紹介したり、特集を組んだりと、いろいろな工夫をしたが、長尺だった。

構成をさまざまに工夫したが、やがてオリジナルの音源を流すコーナーを作ろうと思いたった。ジャズ曲に乗せてオリジナルのショートストーリーをナレーターに読んでもらうコーナーをやることにしたのだ。これは福井時代、福井トヨタの提供で作った番組のスタイルだった。

まず私が選んだジャズ曲のイメージに合わせてショートストーリーを書く。ごく短いもので、コーナー枠は5分から6分程度。曲は2曲使い、ショートストーリーも前半と後半の2部に分かれている。それぞれ1、2分程度の短いナレーションになる。これを読んでもらうのだ。

番組の制作費は持ち出しだったので、ナレーターにギャラを払うことはできない。高橋さんがアイディアを出してくれた。彼女は日活の声優学校で教えており、そこの生徒や卒業生に声をかけてノーギャラで収録してもらおうというものだ。勉強ににもなるからいい、という。

さっそく数人の声優の卵がやってきた。みんな20代の若手ばかりである。収録は豪徳寺の私の部屋でおこなった。そのために私はハードディスクレコーダーとマイクをあらたに買った。レコーダーのトラックに曲を転送しておき、それをヘッドホンで聴きながら読んでもらった。

FM福井で榊原忠美氏らとそんな番組を作っていたので、私はそんなコーナーは簡単に作れるものと思っていた。ところが目算はまったくあてがはずれた。声優の卵たちがまったく「読めない」のだ。もちろん日本語としては読める。が、榊原氏のような「表現力」がまったくない。

せいぜいアニメーションの吹き替えのような作り声でのキャラクター表現しかできない。それではせっかく精魂こめて書いた私のショートストーリーがまったく生きないではない。アニメ読みではなく、朗読表現がほしかったのだ。しかも音楽ともコラボレーションしているような。

榊原氏がいとも簡単に、しかも次々とおもしろいアイディアを繰り出しながら読んでいたものだから、私はてっきり訓練を受けたナレーターならみんなそういうことができると思っていた。実際にはまったく違った。ただ読むことと、表現すること/音楽に乗ることはまったく違う。

私は若手声優たちといっしょに、勉強会をやることになった。もともとビアの教師や小説工房の世話役をやっていたように、人になにかを教えたり、いっしょに考えるのは嫌いではない。若い連中と朗読の研究をすることになり、そのためにまず文芸小説の読み方の練習を始めた。

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