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2010年4月27日火曜日

無名性にいたることが望み

『ユリイカ』の現代ピアニスト列伝のなかで、ピアニストの舘野泉さん(左手のピアニスト)が「ピアニストは手職人」という文章を書いている。
『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんが米寿を迎えながらも描きつづけていて、それは「描くことはもう仕事という感覚ではない」という話を引き合いにして、ご自分の「ピアノを弾く」という行為も別段何かをしているということではない、という。

 この文章の最後に、
「作品との対峙、対決をし、自分の個性を主張する行き方は好きではない。作品を通して無名性にいたることこそが望みだ」
 とあって、その立ち位置は私とは少し違うところがあるけれど、「無名性にいたることが望み」という言葉はすっと私のなかにもはいってくる。
 ものを書くとき、ピアノを弾くとき、私の前には朗読者/共演者/主演者の姿があって、私自身は影のように透明/無名でありたいと、心から思う。