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2010年2月26日金曜日

声優/ナレーター/朗読者をより優れたオーディオブック・リーダーに育てるために

 これまで何度か、オーディオブックという商品(コンテンツ)を取り巻くマーケット事情について書いたが、最近またなんとなく動きが変わってきた。

 私が制作に関わっている「アイ文庫オーディオブック」ではおもに、著作権が切れたパブリックドメインものを含めた文芸作品の朗読がラインナップとなっている。オリジナル音楽と合わせた詩曲集などもある。また、他社から依頼されるものでは、教科書、英文など、通常のナレーターの手に負えないようなものも多い。
 現在、マーケットに流れているオーディオブックは、何度か書いたように、オーディオブックを専門に製作する会社が、ナレーターや声優を効率的に使って最小限の過程で非常に安価に作りあげたものが多い。スピードや経済効率が優先されるビジネス書や自己啓発本、講演録といったものは、そういう作り方がいいだろうとは思う。
 と、同時に、活字出版社も自社でオーディオブックを作りたいというニーズが高まってきている。
 ところが、出版社が製作会社に発注してできあがってきたオーディオブックは、出版社や著者が望んでいたほどのクオリティが確保できないことがあるらしい。それはそうだろう、上記のような効率重視の作り方をするラインでは、著者が満足できるほどのハイクオリティな朗読本を作るのはなかなか難しいと想像できる。

 今後、この動きは増えてくると思われる。出版社側は、多少予算がかかってもかまわないから、長いあいだ売りつづけられ、著者も満足できるクオリティのオーディオブックコンテンツを、自社権利で持っておきたいのだ。今後、電子書籍がさらに普及していくだろうから、デジタルコンテンツに対する関心は出版社側にも高まってきているし、また電子書籍リーダーはたいていオーディオブックも再生できるということもあるだろう。
 問題は、こういったクオリティに対する要求に対して、すぐれたオーディオブック・リーダー(朗読者)があまりに少ない、ということである。
 有名な俳優や声優を使う、という手はある。が、オーディオブックの収録には非常に時間がかかるのでスケジュールを押さえるのが大変だろうし、ギャランティーも高額だろう。一番手っ取り早いのは、世の中にたくさんいらっしゃるナレーターや声優の若手を、ハイクオリティな朗読者にスピーディーに育てあげることだ。
 アイ文庫ではかつて、現代朗読協会と協力して、このような朗読者育成の場を持っていたが、せっかく育成した朗読者がいても、出版社側の受け皿がなく、つまり仕事が十分になかった。いまでも十分にあるとはいえないし、また予算も厳しいことは事実だが、いまから優秀なオーディオブック・リーダーをめざす人を多く育て、今後に備えるのは有効なことではないか。そろそろそういった環境が整ってきたのではないか。

 そういう話を、昨日、ことのは出版の野村社長としていた。
 幸い、私たちには、ハイクオリティなオーディオブック制作と朗読者育成のノウハウがある。ふたたびオーディオブック・リーダーの育成に乗りだそうではないか。そういう合意が、とりあえず暫定的にできた。
 具体的な内容と詳細については、近日中にことのは出版のウェブサイトに発表されることだろう。
 我こそは、と思う方は、今後の情報に注目されたし。