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2010年2月21日日曜日

電子書籍のこれからのありよう

 書き手の立場から、電子書籍のこれからのありようを考えてみた。
 これまでの書籍の「ありよう」は、書き手ではなく、出版社や読み手のニーズが作ってきた。しかし、これからは、書き手が自分の望む形の電子書籍のありようを決められるのではないかと思っている。ある程度のマーケットニーズの影響はあるにしても。

 完全に自分ひとりでハンドリングできるとしたら、どんな電子書籍を作りたいか。
 いろいろな形態があると思うけれど、私の場合、まず、「いつでも書きかえられる」あるいは「進化できる」本を作りたい。
 これは切実な望みだ。
 過去に何冊も本を書いて、出してきたが、原稿が自分の手を離れ(つまり最終ゲラ校正が終わり印刷所にまわされ)たまさにその瞬間から、後悔が始まる。あそこはこう書けばよかったとか、いまだったらこういうふうに書くのに、といった後悔である。
 当然だろう。原稿を書いているときの自分と、その原稿が活字になったときの自分では、大きなタイムラグがあり、もはやおなじ人間とはいえないほどの時間旅行を経験しているからだ。少なくとも、私はそうだ。
 いつでも好きなように書きかえられる本。それが私の理想だ。
 ソフトウェアがそうであるようにも、本もバージョンアップしていければいいと思うのだ。バージョンナンバーをつければいい。

 いま私は、現代朗読についての本をまとめている最中だが、いくら書いても次々と訂正が入る。去年書いた部分が、今年はもう使えなかったり、大幅に修正しなければならなかったりする。現代朗読そのものが猛烈な勢いで進化しているためだ。
 変化している最中の方法論や、そのことを書いている人間そのもの(私のことだが)も変化している場合、文字列として最終的に固定できるものはなにもない。テキストそのものも変化していければいい。
 電子書籍はそれを可能にするのではないか。
『現代朗読論 Ver.1.0』として出たものが、「Ver.1.02」だの「Ver.1.13」だのと変化していく。読者も最新のバージョンを常にダウンロードする権利がある。
 こういう考えは、書き手の夢想にすぎないのだろうか。あるいは実現可能な未来予測だろうか。