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2009年9月4日金曜日

「Kenji - 宮澤賢治・音と光と土 - 」公演レポート(1)

(Photo by Funky Yoshi)

 2008年11月27日にスタートした公演の計画が、先日2009年9月2日に本公演を迎え、無事に終演となった。その本公演の模様を、演出/出演者としての立場からレポートしておく。

 本公演のために名古屋入りしたのは、8月30日。
 午後から、稽古場として借りていた劇団クセックACTのアトリエ〈ツバキハウス2〉に行き、アトリエでの最後のリハーサルを夜までおこなう。
 出演者は、一般公募したワークショップ参加者13名と、メインキャストの6名、歌1名、演奏者2名。スタッフも合わせると40名以上の大所帯である。
 翌8月31日の夜、東京から参加の歌の和田由貴、大阪から参加のメインキャストのひとり窪田涼子が来て、これまでふたりが抜けていた部分の確認リハーサルをおこない、会場に運び入れる荷物の確認。

 9月1日、午前9時。会場入り。
 本公演の会場は名古屋市芸術創造センターホールで、満席になれば640人が入れる。今回、もともと1回きりの公演だったのを、昼夜2回公演に変更になったため、客数も分散し、2階席には客を入れないことになった。
 ホールではすでに舞台監督の井上さん、照明の吉戸さん、音響の加藤さんと、そのアシスタントの方々が動きはじめている。出演者も集合し、まずは楽屋に荷物を運びこむ。そのあと、なにかあればすぐにセッティングの手伝いができるように、ホール回りに待機。そして、ホールの響きなどを各自声を出して確かめたりする。

 午後、ステージ上での初リハーサル。距離感、音の響き、送風機や美術の具合、そして最後に降らせる緑のチケット仕掛けの確認など、どんどん進んでいく。スタッフがベテラン揃いなので、とどこおりがない。また、芝居とは違って装置の「建て込み」がない分、さくさくと進む。
 リハーサル中にチケットを一度降らせてみよう、ということになった。いわゆる「紙吹雪」のようなものだが、大きさは汽車のチケットくらいある。これは『銀河鉄道』に出てくる緑色のチケットを模しているのだ。それを、降らせるために、12万枚裁断して用意してあった。
 バトンに布と網を組み合わせた仕掛けを吊り、それにチケットを乗せる。天井まで持ちあげて、ローブを揺さぶってチケットを降らせる。
 どうやら仕掛けはうまくいったようだ。大量のチケットが、送風機にあおられて、美しく舞台上に舞う。舞台上ばかりか、客席のほうにも大量に降り注ぐ。それも美術の一歩さんの狙いなのだ。

 夜になって、日中、用事で来れなかった出演者も揃い、もう一度、やや本格的なリハーサルを行なう。
 前述したように、翌日の本公演では、本来ゲネプロだったのを追加公演としたため、ゲネプロをやらないことになった。そのために、前日までにしっかりとリハーサルをしておくことになったのだ。
 一番心配だった降らせた後の大量のチケットの始末も、全員が総出でやれば意外に短時間でできることがわかった。
 夜8時半には全リハーサルを終え、撤収。
 実は、尺八のやのしくうさんだけが本番当日しか来られないので、完全なリハーサルはできておらず、音響のセッティングもそこだけ残っているのだが、まあなんとかなるだろう。
 翌日の本番にそなえて早めに宿に帰り、ゆっくり休む……はずが、当然のごとく「ビールでも一杯」ということで、メイン制作陣と近くの飲み屋に流れた。ご苦労さまである。

 9月2日、本番当日。午前9時半、会場入り。
 ステージ前に全員が集合して、スタッフからの注意と確認事項を聞いていると、やのしくうさんもいらした。さっそくしくうさんも入れて、音響テストを兼ねたリハーサルを開始。その間に照明や送風機などの仕掛けも最終調整を行なっているらしい。
「らしい」というのは、演出である私も、会場入りしてからは出演者となり、リハーサルのときはステージ上のピアノに張りつきになってしまうので、全体像がほとんどわからないのだ。そのかわり、時々は自由に動けるバラさんが動き回っては、的確なアドバイスをしてくれる。ありがたい。
 ステージ上のリハーサルでは、やはり稽古場とは違い、出演者は緊張しつつ生き生きとした動きになってきた。とくに、今回、朗読(つまり本を手に持って読む行為)に初挑戦のクセック団員の喜多千秋と樋口大介は、水を得た魚のように声を出しながら、ステージ上を所狭しと走り回っている。楽しくてしかたがない、という様子が、私にもうれしくてたまらない。こうやって、いろいろなリミットをとっぱずして、自由にのびのびと表現してもらう場を作るのが、私のねらいのひとつだったからだ。
((2)につづく)