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2011年9月3日土曜日

個人電子出版の試みとその可能性(とその喜び)

8月31日の夜にリリースした私の電子ブック『原発破壊』の閲覧数が、あっさりと1,000を超えてしまいました。びっくりです。
ろくに宣伝もしていないのに、どういう人が読みに来てくれているんでしょうね。宣伝といっても、自分のブログと、ツイッターでいくらか告知を流したくらいですよ。
ちなみに、こちらから閲覧できます。

1,000人の読者というと、文芸の世界ではそこそこ大きな数字です。
たとえば、詩集などが活字で出版される場合、1,000部などという部数はよほどの有名詩人でなければありえません。
有名な純文学月刊誌が何誌かありますが、実売部数が2,000を切っている、などという話を聞いたこともあります。
芥川賞を取っているようなかなり有名な作家でも、純文学作品の初版は1,500部とか2,000部で、それでもきつい、という話もあります。
『原発破壊』は純文学ではありませんが、たったの二晩で1,000人以上に閲覧されました。これはちょっとした驚きです。

以下のようなデータがあります。
米国出版社協会(AAP)とシンクタンクのBISGが始めた新しい包括的な出版統計サービスBookStatsによって発表されたレポートによると、米国の書籍出版が2008年以降の不況下の2年間で、5.6%と低いながらも着実に成長していたことが示されました。活字出版の低迷を電子書籍が補完し、逆に全体の底上げをしていることを意味しています。
日本では残念ながら、このような数字はありません。日本の出版社は相変わらず書籍の電子化に対して動きが鈍重で、世界の動きから大きく遅れをとっています。

私が電子出版に力を入れているのは、なにも世界の動きに乗っかろうというわけではありません。個人的必要性があるからにすぎません。
何度も書いたことなのでごくはしょって書きますが、私は30代の頃、職業小説家として生計を立てていました。
もともと好きで始めた小説書きで、作家になれたことがうれしくてしかたなかったのですが、そのうちそれが苦痛でしかたがなくなってきたのです。なぜなら、出版社は私に決して「好きな小説」を書かせてくれはせず、そのかわり「売れる小説」ばかり要求してきたからです。
それはそうでしょう。彼らだって商売でやっているのだし、収益をあげなければ作家どころか自分たちが飯の食い上げになります。甘いことはいってられないのです。
もちろん、私のようにいやけがさす作家ばかりではありません。商業小説を書くことそのことが好きな作家はたくさんいますし、お金が好きで書いている作家もいます。しかし、私はそうではありませんでした。
私は「商売」として小説を書くのをやめ、かわりにネットで小説を配信しはじめました。パソコン通信時代から始まって、ウェブサイトやメールマガジン、ブログ、ケータイサイトなど、ほとんど好き勝手に書いてきました。お金は入らないけれど、それは幸せな時間でした。
しかし、これでは「趣味」と変わりありません。私はあくまで、「仕事」として小説を書いていたいのです。
誤解してもらっては困るのですが、「仕事」というのは「お金になる」ということを意味していません。「お金になる」ことも意味として含まれているかもしれませんが、それがメインではありません。自分がなにを本望として生きているのか、その生活の中心になる柱のことを「仕事」といい、また自分と社会が関わる(貢献する)ための重要な手段のことを仕事というのです。

電子出版は、出版社や流通を経由することなく、一個人作家が直接、本を読者に届けることができるからです。
出版社や流通は商業システムに縛られて動いていますから、採算が取れない商品はそのサイクルから外されていきます。彼らには商品に対する一定の基準があって、書き手はその基準をクリアしたものを提供しなければ本を出してもらえませんでした。
ところが、版元や流通を経由することなく、直接、読者に本を届けるシステムがようやく整ってきたのです。
いままでもそれはある程度可能でしたが、問題は決済でした。
一個人作家が自分のウェブサイトに電子書籍データをならべ、売ろうとしても、決済手段がありませんでした。せいぜい銀行振込くらいでした。それでは読者の利便はありません。
私がいま使いはじめている「パブー」という電子ブックサイトでは、いろいろな決済手段が用意されています。読者は好きな手段で本を購入することができます。
作家の側は、電子書籍データを自分で用意し、サイトにアップロードするだけです。売れればサイト側が決済してくれ、作家の銀行口座に振りこんでくれます。ただし、決済手数料はかかります。
いまのところ、決済手数料(およびシステム利用料)は30パーセントです。これはアップルの App Store とおなじ料率ですね。この料率はなんとなく世界全体の流れになっているように思えます。
作家には70パーセントが入ってきます。

(以下、略。本文全体は養成塾のメールマガジンで掲載しています)

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