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2011年9月28日水曜日

現代朗読協会・東北被災地ツアー報告(5)

臨時庁舎は災害対策本部にもなっていて、休日にもかかわらず車が頻繁に出入りしています。警察車両も出入りしています。
 松嶋さんが戻ってくるのを待つあいだ、私たちは脇の広場でおこなわれている復興市の様子を見に行くことにしました。
 広場では仮設のステージが作られ、屋台がたくさん出て、大変にぎわっています。広場のまわりには車がたくさん並んでいて、なかには遠方の県のナンバーもあります。また、宿泊用のテントもいくつか並んでいて、連休を利用して泊まりがけで来ている人もいるのでしょう。
広場に行ってみると、たくさんの天幕が並んでいて、地元の産品や食べ物を売っています。これは地元の人たちが出しているものでしょうか。町が壊滅して、町で商売ができなくなっている人にとっては、ここでものを売ったりできるのはありがたいでしょう。お客さんもたくさん来ていて、地元の人ばかりではなさそうです。遠方から来たような人もたくさん見受けられました。
広場の端には仮設ステージができていて、かなりの大音量で音楽が流れています。
 ステージの上には女性歌手がひとりいて、カラオケに合わせて歌っています。私は知らない人でしたが、東京から来たプロの歌手のようでした。しかし、バンドはいなくて、ひとりで歌っています。
 聴いている人も何人かいましたが、できあいのカラオケに合わせて歌っているのは、いくら生身の歌手がやっているとはいえ、なんとなくお仕着せの商業的なショーみたいで、ちょっと変な感じをおぼえました。

 このツアーの前、こういったボランティアの芸能慰問活動について、私はいくらか声を聞いていました。
 そのひとつに、東京から無料コンサートとか無料ライブとかいって来るのはありがたいけど、もうそんなに来てもらわなくてもいいんだよね、という意見がありました。たしかに考えてみれば、東京から芸能活動として慰問に行く人はそれが一回きりのチャンスかもしれませんが、受け入れ側にしてみればそういう人が次々と来れば何度も対応しなければならないわけです。なかには自分の好みではない音楽もあるでしょう。
 だから、私たちも、行くにあたってどんなことをすればいいのか、なにをすれば喜んでもらえたりお役に立てるのか、かなり悩みました。しかし、結論は出ないまま、いくつかの演目やワークを用意して、来てしまいました。
 ただ、これだけは考えていた、ということがあります。ショー的に一方的になにかを演じたり歌ったりして終わり、というようなことだけはやらないでおこう、ということです。とにかく、なんらかの形でコミュニケーションを取りたい、つながりを持ちたい、ということが、私の頭のなかにはありました。
 広場の仮設ステージでカラオケに合わせて歌っている女性を見ながら、私はこの思いを強くしていきました。
(つづく)