私の本分は小説書きであるが、それとて長編小説、短編小説、掌編小説、随筆など、さまざまな局面がある。それぞれの局面はまったく異なった身体性を必要とするといっていい。
小説に近接したもので「詩」というものもあるが、境界線は曖昧だ。が、小説を書くときと詩を書くときとでは、まったく異なる筋肉を使うことも事実だ。
演劇や朗読劇のためのシナリオを書くときも、おなじ家の異なるフロアに立つことになる。
2009年もいよいよ終わりなので、自分の備忘録もかねて、いま執筆しているものをリストアップしておきたい。
中学校公演のための朗読プログラム「ホームズ」のための脚本。上演時間は30分強のボリューム。
そのボリューム感がなかなか難しい。が、長年の経験で、この内容でこのくらいのテキスト分量だとこのくらいの時間になる、というのがだいたい数分前後の誤差で予測できるようになっている。
「ホームズ」はコナン・ドイルの原作を核にすえて脚色し、さらにオリジナルなアイディアを盛りこんで構成する予定。朗読者4、5人によるプログラム。
小学校公演のための朗読プログラム「Kenji(小)」のための脚本。上演時間は30分。これはすでに中学校公演用にできあがっている脚本があり、すでに何度も上演ずみなのだが、これを小学校向けに大幅に手を入れて構成しなおそうというものだ。一部、宮澤賢治の使用テキストを入れ替え、音楽を少し増やす予定。オリジナル曲も使うかもしれない。
「沈黙の朗読」のための脚本。3月6日に中野〈Plan B〉で初演。上演時間は45分程度の予定。
これはひとり読みのための脚本で、完全オリジナル。「光から闇へ、喧噪から沈黙へ」向かうための朗読テキスト。
名古屋でのウェルバ・アクトゥス公演のための「Kenji」脚本。今年2009年9月に名古屋市芸術創造センターで2回公演をおこなったが、2010年にも公演が予定されている。ただしキャストが大きく変わる予定なので、それにあわせて脚本も大幅に加筆変更するつもりだ。
ほかに、毎日断続的に書きついでいる「サウンドスケッチ」のシリーズ、「朗読論」の原稿などがある。
それにしても、今年もたくさん書いた。一番大掛かりなものは、なんといっても名古屋の「Kenji - 宮澤賢治・音と光と土 - 」のための脚本だろう。上演時間は90分となった。
これに先だって、もちろん中学校公演用の「Kenji」も、こちらは世田谷文学館の委嘱で書いたのだった。
また、前の豪徳寺のスタジオで開催した朗読ライブのための脚本「漱石の夢」というのもあった。
5月の連休には銀座のアップルストアで「前略・な・だ・草々」という朗読パフォーマンスを上演した。このための脚本も、「Kenji」と並行して苦労しながら書いたのを思い出す。
そして、先月には東松原の〈Spirit Brothers〉で「メイドたちの航海」という朗読ライブも開催した。この脚本書きも、名古屋の公演の直後だっただけにかなり厳しかった。
そのほか、サウンドスケッチのシリーズも断続的に書きつづけていた。スタジオライブやビデオライブ、あるいは窪田涼子が大阪でおこなったライブのために単発で書き下ろしたような作品もある。
商業的な出版の世界からはまったく遠ざかってしまったが、まずは質、量ともに自分なりにがんばった年であろう。